May 30, 2019

自転車泥棒

[Book]

自転車泥棒
呉明益 (著), 天野健太郎 (翻訳)
 作者はヴィットリオ・デ・シーカによる第二次大戦後を描いたネオレアリズモのイタリア映画『自転車泥棒』をリスペクトしているが、内容に関連性はない。
本書を読む切っ掛けとなったのは東京人2019、2月号の川本三郎・東京つれづれ日誌に本書の翻訳者である「台湾を愛した天野健太郎さん逝く」の記事でこの「自転車泥棒」に興味が引かれ、読んでみようと思い立った。
内容は第一章のタイトル「我が家族と盗まれた自転車の物語」の通りなのだが...失跡した父と消えた自転車の行方を追うことは、台湾の近現代史を辿ることでもあり、日本を含めて東亜細亜の近現代史とも重なり、歴史のメインストリームから零れ落ちた人々の語られない物語の地層を発掘する文化人類学か考古学の様でもある。作者が後記で『この小説は「なつかしい」という感傷のためではなく、自分が経験していない時代とやり直しのできぬ人生への敬意によって書かれた。』とあるように...少年時代、徴用工だった父を一として、戦中、戦後を生き抜いた人の言葉「戦争には、なつかしいことなどなにひとつありません。でも、こんな年になってしまうと、私たちの世代で覚えているもの、残されているものは全部、戦争の中にある....」と...人間だけでなく...オランウータンの一郎、ゾウのリンワン、唯一、心を許し合える相手がゾウだったムー隊長の数奇な運命...等々、世界は語られない物語で出来ているのだと、再確認。
戻ってきた鐵馬「幸福号」をレスキュー(レストア)し、家族のアイデンティティーは恢復するのだが、それは幸福号がパーツも組み立ても全て台湾で行われた最初の自転車であったことから、二重の意味もあるのだろう。
1996年四月の台北蘋果紀行で、原地人、内省人、外省人、国民党亡命政権、等々の台湾の一枚岩ではない複雑な民族関係を一応、見聞き接したりしていたので、多少なり共、読書する上で理解の助けとなった。

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Posted by S.Igarashi at 08:10 AM | コメント (0)

May 03, 2019

民主主義

[Book]

民主主義 (角川ソフィア文庫)
近くのイトーヨーカドー八王子店の新星堂が撤退し、替わりのテナントは入らず、隣のくまざわ書店が売場を拡張し、CDやDVDも扱うようになった。と云うことで、雑誌、書籍、新書、文庫等々の売場が大移動...従って、何処に何があるのか...???店内をウロウロ...文庫のコーナーで目に留ったのが本書...腰巻きに書かれた内田樹の「読み終えて、天を仰いで嘆息した」が気になったのだろう。その日は買わなかったが、やはり気になるので後日、別のくまざわ書店で求めた。
と云うことで、内田樹の解説を読むと...1948年(昭23)から1953年(昭28)までの間、中学高校で用いられた文部省が編纂した上下二巻の「民主主義の教科書」を一冊の文庫本に纏めたのが本書である。戦後定められた憲法の理念を中高生に啓蒙する為の教科書だが、6年間しか使われていない。この間、一年でも中高生だった世代はギリギリで1930年生まれから1941年生まれが該当する。先日、退位した方は高校生でこの教科書を使っていたことになる。同い年の永六輔はこの教科書から...多くを学んでいたのかも。
民主主義が蔑ろにされている今日、日本国憲法と併せて読みたい。

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Posted by S.Igarashi at 08:51 AM | コメント (0)
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