August 12, 2019

1939・夏・2019

[Think]

「ノモンハンの夏」の後書きで作者の半藤一利は、編集者の時代、議員会館の一室で元陸軍参謀の辻政信と対面したときの印象をこう語っている、『....およそ現実の人の世には存在することはないとずっと考えていた「絶対悪」が背広姿で、ふわふわとしたソファーに座っているの想いを抱いたものであった。』これを読んで、ノモンハンの生き残りだった中学の教師Aがレイシストで歴史修正主義者であったのも宜なるかなと想った。私でさえ70年の人生の中で出会った最低の人間が教師Aだった。

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Posted by S.Igarashi at 09:05 AM | コメント (0)

July 15, 2019

自転車泥棒

[Book]

自転車泥棒
呉明益 (著), 天野健太郎 (翻訳)
 作者はヴィットリオ・デ・シーカによる第二次大戦後を描いたネオレアリズモのイタリア映画『自転車泥棒』をリスペクトしているが、内容に関連性はない。
本書を読む切っ掛けとなったのは東京人2019、2月号の川本三郎・東京つれづれ日誌に本書の翻訳者である「台湾を愛した天野健太郎さん逝く」の記事でこの「自転車泥棒」に興味が引かれ、読んでみようと思い立った。
内容は第一章のタイトル「我が家族と盗まれた自転車の物語」の通りなのだが...失跡した父と消えた自転車の行方を追うことは、台湾の近現代史を辿ることでもあり、日本を含めて東亜細亜の近現代史とも重なり、歴史のメインストリームから零れ落ちた人々の語られない物語の地層を発掘する文化人類学か考古学の様でもある。作者が後記で『この小説は「なつかしい」という感傷のためではなく、自分が経験していない時代とやり直しのできぬ人生への敬意によって書かれた。』とあるように...少年時代、徴用工だった父を一として、戦中、戦後を生き抜いた人の言葉「戦争には、なつかしいことなどなにひとつありません。でも、こんな年になってしまうと、私たちの世代で覚えているもの、残されているものは全部、戦争の中にある....」と...人間だけでなく...オランウータンの一郎、ゾウのリンワン、唯一、心を許し合える相手がゾウだったムー隊長の数奇な運命...等々、世界は語られない物語で出来ているのだと、再確認。
戻ってきた鐵馬「幸福号」をレスキュー(レストア)し、家族のアイデンティティーは恢復するのだが、それは幸福号がパーツも組み立ても全て台湾で行われた最初の自転車であったことから、二重の意味もあるのだろう。
1996年四月の台北蘋果紀行で、原地人、内省人、外省人、国民党亡命政権、等々の台湾の一枚岩ではない複雑な民族関係を一応、見聞き接したりしていたので、多少なり共、読書する上で理解の助けとなった。

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Posted by S.Igarashi at 08:10 AM | コメント (0)
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