ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ・著
この四月から東京新聞・夕刊に社会時評を寄稿しているブレイディみかこさんですが、話題となっている著書は読んでいなかった。先日、くまざわ書店に立ち寄った際、例の女帝と共にイエローの表紙が平積みされていた。と云うことで発行から一年を経て19刷となった本書をレジまで運んだ。家に戻ってプロローグの「はじめに」を読み始めると「ヤバイこれは嵌まりそう」の予感。
改めてバイオグラフィーを確認すると音楽好きで保育士でライターでコラムニストの彼女は1965年生まれとあるから、彼女がバリバリのティーンエージの頃は、1980年代と云うことなる。当時はMTVが時代を席巻し、ビデオデッキが家庭に普及し音楽が聴くだけのものから観るモノに変っていった時代、その頃、ピーター・バラガンがコアな英国の音楽シーンを伝えるエバンジェリストとして頭角をあらわし、深夜枠でポッパーズMTVのMCを務めていたりしていた。試しにバラガンと本書をキーワードに検索してみると、Tokyofmのバラガンの番組にブレイディみかこがゲストとして英国からリモート出演していた。彼女に少なからず影響を与えた日本在住の英国人と英国在住の日本人との、やや屈折したリモート対話とは...まさに今どき。
と云うことで本書はイエローでホワイトで、ちょっとブルーなボク(息子)が公立の元底辺中学校に進学してからの一年半をパンクな母ちゃん(日本人)が、日常に起こるエピソードを綴っただけのものだが、それだけで、社会の分断と経済格差が齎す英国の現状を的確に伝えている。
僕らが小中学の義務教育の段階で教わった英国は「ゆりかごから墓場まで」と福祉が充実した国として北欧諸国と並び福祉国家の目標とされていた。それがサッチャーの保守党政権によって社会資産は民間に売却され、富めるものは資産を増やし、貧しい者は家を追い出され...それに加え、大英帝国の負の遺産の旧植民地からの移民やら、東欧、東亜細亜からの移民・流民やら...なんたらかんたら、..米国とは異なる人種や性の多様性も...ネイティブの教育を受ける息子と共に母ちゃんも、理不尽な階級社会を生きるワーキングクラスの矜恃を学ぶのだ。
内容
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はじめに(試し読み)
1 元底辺中学校への道
2 「glee/グリー」みたいな新学期
3 バッドでラップなクリスマス
4 スクール・ポリティクス
5 誰かの靴を履いてみること
6 プールサイドのあちら側とこちら側
7 ユニフォーム・ブギ
8 クールなのかジャパン
9 地雷だらけの多様性ワールド
10 母ちゃんの国にて
11 未来は君らの手の中
12 フォスター・チルドレンズ・ストーリー
13 いじめと皆勤賞のはざま
14 アイデンティティ熱のゆくえ
15 存在の耐えられない格差
16 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン
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試し読み
Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM_vol.633
2020/06/12
ゲスト・ブレイディみかこ
MC・ピーター・バラガン
「社会が存在する」 英首相発言 背景は…
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ブレイディみかこ「地べたで人とぶつかる中から本当の理解が生まれる」