アジア辺境論 これが日本の生きる道 (集英社新書)
内田 樹 姜 尚中
一年前(2017.8.24)の発行である。ブックカバーの見返しにある内容紹介に『アメリカ、欧州で排外的な政治勢力が台頭する中、ロシア、中国の影響力が日増しに拡大している。米ソ対立の冷戦終結から四半世紀経ち、世界各地に複数の覇権の競合関係が生まれている。はたして、その狭間で日本が生き残るためには何が必要なのか?
その鍵は日・韓・台の連帯にあり。アメリカとの一方的な従属関係を見直し、中国、ロシアなど、スーパーパワー間にある中小民主主義国家同士の協力関係の構築いかにして可能か。世界史レベルの地殻変動と戦後の平和国家的な国の在り方を蹂躙する近年の日本の政策を目の前に、リベラルの重鎮ふたりがその理路を提示する。』とある。
二人とも僕と同世代であるから、小中の義務教育で、平和憲法、基本的人権、表現の自由、義務と権利、三権分立、等々を学び、多少進歩的な教師がいれば、英国の社会福祉政策や北欧の福祉国家、スイスの永世中立等々を理想として教えられたと推測する。もちろん、戦前の生き残りのトンデモない教師も居たが...表立ってヘイト的発言をすることは憚られていた。
それが...今ではどうだろう...民主政治は蔑ろにされ、政治、経済、教育、メディアは劣化する一方...そのような状況下で希望を失わず、生きるには......先ずは現状の認識から...他者の目も...。
◆目次◆
はじめに 日本・韓国・台湾連携の夢姜──これがボクらの生きる道 内田 樹
序 章 問題提起──自由主義は何故これほどもろかったのか
・トクヴィルの見たアメリカン・デモクラシーはどこへ行ったのか
・世界中に跋扈する反知性主義・ポピュリズムの行方
・デモクラシーの内なる敵とは
・重要になる「日韓台」新しいアジアの連携
・まだまだ未熟な民主主義
第一章 リベラルの限界──「モビリティー」に無力化された自由主義
・独裁と親和性の高い民主制
・必ず愚行に走る独裁者
・大人がいないと成熟しない民主主義
・九〇年代に急速に変った「自由」の規定概念
・モビリティーに改鋳された自由主義
・本当のフリーダムとは「心の自由」
・マーケットが政治を席巻──効率主義化する政治
・意図的に作られた国会議員の劣化
・排除の構造──弱い日本の司法権
・自閉化するアメリカ──時代は穏やかな中世回帰!?
・今後の成長は「戦時経済」頼り
・コンパクトシティ構想の愚
・前代未聞の人口減少社会がやって来る
・今こそ「ちょっとたんま」が必要
第二章 ニッチな辺境国家が結ぶ新しいアジア主義の可能性
・アジアのコスモロジーを受肉させる
・帝国のニッチにある韓国、日本、台湾、香港
・アメリカ抜きで「政策決定」が可能に
・人口二億の巨大経済圏の構想
・反共法の弊害──マルクスを知らない韓国の人々
・日韓の溝を埋める漢字の復活
・ギャップは文化の交流で埋める
・『大東合邦論』のファンタジー
・DNAの奥底でつながっている親近感
第三章 アジアの連携を妨げる「確執」をどう乗り越えるか
・無意味な日韓の対立軸
・日韓連携の話で拍手する韓国の人たち
・市民デモで政権を変えた初の快挙
・弾劾事件が日韓連携のきっかけに
・ありうるトランプ大統領の弾劾・失墜
・早く動きすぎた安倍の誤算
・アメリカの国力の源はカウンター・カルチャー
・世界の右翼はモスクワに支配されている!?
・リスクを分散させる日韓の「安保協力」
・「確執」はグラスルーツの人的交流で
・文化を背景にした国民国家のゆるやかな統合
第四章 不穏な日本の行く末──辿り着けるか「日本の生きる道」
・日本のナショナリストはただのエゴイスト
・政治の消滅──公的資源の私物化
・働き方の多様性という嘘
・十数年で定着した自己責任論
・ドメスティックな日本の教育現場
・大阪的本音主義の批評性
・韓国の復元力
・問題が顕在化しにくい日本の隠蔽体質
・猛き者、ついに滅ぶか
・喫緊の課題はナショナリズムの解毒
おわりに アジア辺境の「虚妄」に賭ける──これがみんなの生きる道 姜 尚中
誰が世界を支配しているのか?
出版社の本の紹介には『『アメリカンドリームの終わり』が話題となっている、知の巨人、ノーム・チョムスキーが2016年に執筆した本書は、これまで一貫して米国政府の横暴や、それに従う御用メディア、御用知識人を批判してきた彼の集大成、あるいは遺言とも言うべき一冊。米国、中東だけでなく、日本を含めた東アジア情勢(特に北朝鮮の核問題の本質)にも触れた、「これからの世界」を読むうえで、必読の一冊』とあるが...
今年の3月から4月までテレビ東京の平日昼に放送されていた米国ドラマ『NCIS:LA極秘潜入捜査班4』でチョムスキーの本を反体制思想の教授に薦められたと云う学生に捜査班の女性が身分を隠して近付く件があった。ドラマは70年代の過激派の一人が名前を変え身分を隠して教授となり、最後は内ゲバで終身刑になると云う、判で押したような愛国ドラマとなっていたが、出演者(極秘潜入捜査班)のどいつもこいつも仲間内で罵倒しあい、ルールも都合よく自分の利益に合わせ解釈したりとか...絶対、米国には住みたくないと思わせるドラマだった。まぁ、ガキの頃に見ていた西部劇も白人社会を正当化する御都合主義そのままのプロパガンダで、相も変わらずですが、同じ時間帯で放送されていたリドリー・スコット監修の「NUMBERS」は文明批評にもなっていたのに対し、公権力に対し忖度したような内容であった。まぁ、それだけチョムスキーは公権力には煙たい存在なのだろう。(3月に書いたまま塩漬けになっていたが...トップページの記事が無くなったので。)
双葉社・誰が世界を支配しているのか?
上記ページから「日本の読者の皆さまへ」の立読み可能。