沖電気工業・八王子事業所が撤退し、そして...一棟だけ残った...跡地も暫くの間...取り敢えず…駐車場に...使われていた。その跡地利用に建つ大型商業施設の概要が公表され地元説明会が開かれたのは昨年のこと...交通渋滞を懸念する地元住民の声には耳を貸さず、計画はそのまま実行に...前面道路からのアプローチの写真を見ても歩行者や近隣に対して何も考えてないことが良く解るプロット・プラン。モールの中に引きずり込んでしまえば、こっちのモノ...と云うことでしょうね。
この地域には他にも大型商業施設が乱立...さてさて生き残るのは......そして良い明日を迎えられるのは...果たして...
それにしても、駅前にあったSoftBankもDoCoMoも...駅前のダイエーにあった「とんかつ・さぼてん」も、この商業施設に移動...通勤の帰りに利用していた地元民には不評。八王子市民球場の命名権もこの商業施設の親会社の.関西企業に売渡し...八王子はどうなることやら...
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市ケ谷からの帰り都営新宿線と京王線を乗り継ぎ、京王八王子から甲州街道沿いの廃れて行く商店街の中、孤軍奮闘している個人商店を横目に横山町から八日町まで歩き、八王子夢美術館で会期が今週末までとなった「カッサンドル・ポスター展」を見てきた。チャコールグレーの壁面に展示されたカッサンドルの大型ポスターは、極端にパースペクティブを強調したり、部分を極端にクローズアップした構図等々、コルビジュエをして「キュビズムではない」と言わしめるほど、トリッキーでセンセーショナルだったのだろうが、ポップアートやポストモダニズムの季節を通過した後では、グラフィックデザインのルーツとして懐かしさも感じる。そういえばレイモンド・ローウィとイメージが重なる処が感じられたので、ローウィの2004年の展覧会図録を引っ張り出し調べてみると、二人ともアメリカの雑誌「ハーパーズ・バザール」(Harper's Bazaar)の仕事をしていた、これは編集者が同時代の表現者として彼らのデザインを採用していたのだろう。
今回の図録には掲載されていないが、アナザーストーリーとして9枚のレコードジャケットが展示されていた、これはカッサンドルのデザイン事務所による仕事の様だ。その中の一枚、アルド・チッコリーニのサティのピアノ曲集は私も持っていた。尤も私のLPは東芝EMIによる国内盤なので若干の変更は加えられているようだ。
公式サイト:A.M.CASSANDRE
Wikipedia:アドルフ・ムーロン・カッサンドル (Adolphe Mouron Cassandre)
広島市公文書館が開館した1977年に創刊された広島市公文書館紀要の第25号(2013年)から第29号(2016年)までがPDFで公開されていて興味深い内容が幾つかある。
広島市公文書館紀要を知る切っ掛けは『ETV特集「“原爆スラム”と呼ばれた街で」』(再放送6月14 日24:00)の中で広島大学の建築学科系研究室が“原爆スラム”を実測調査した図面等が残っていることを知り、ネット検索したら広島市公文書館に辿り着き、『広島市公文書館紀要』第29号に「〈研究報告〉基町/相生通り(通称「原爆スラム」)調査を回想する。〈前編〉」がPDFで公開されていた。紀要は年に一回発行の様だから、もしかすると〈後編〉は今年発行される第30号に掲載されるかも知れないので、期待したい。
と云うことで僕が興味を抱いたのは広島市公文書館紀要第27号(平成26年6月発行)の『〈翻刻〉「丹下健三書簡」』と、その『〈資料解説〉「丹下健三書簡綴」(藤本千万太資料)について―広島市公文書館所蔵資料との関係を中心として―』である。いずれもPDFをダウンロードできるので、広島平和公園建設の経緯の一端を伺うことができる。平和公園の北側、大田川左岸にあった“原爆スラム”と丹下健三の広島平和公園の構想を重ね合わせて読むのも良いだろう。
磯崎新と藤森照信のモダニズム建築談義で磯崎氏は「今回の対談では、岸田日出刀、丹下健三、浜口隆一、浅田孝は脇役です。」と語っていたが、或る意味「丹下健三・外伝」の体を成している印象もあり、この書簡の存在もモダニズム建築を語る上で貴重な資料と成りえるだろう。
2012年・夏の「フィンランドのくらしとデザイン」展から五年、フィンランド独立100周年記念の巡回展「フィンランド・デザイン展」の図録を補填をする書籍が「フィンランド・デザインの原点 ―くらしによりそう芸術」が宇都宮美術館・主任学芸員の橋本さんの手により刊行されたことをFBで知った。9月に開催される府中市美術館の展覧会に先立ちAmazonより入手した。因みに右は2012年の「フィンランドのくらしとデザイン展」の図録です。フィンランド独立100周年と云うことは1917年のロシア革命から100年ということでもあるが...。
僕にとって「フィンランド・デザイン」と聞いて先ず最初にイメージするのはやはり「アールト」の建築と家具だろう。そしてマリメッコのファブリックとかイーッタラにアラビアの食器...そして近年ではNokiaだろうか。2008年にiPhoneにするまでは3台のNokiaを乗り換えて使っていた。その程度の認識しか持ち合わせていなかった自分にとって2012年の宇都宮美術館で観た「フィンランドのくらしとデザイン展」は目に新鮮だった。
イタリア・ルネッサンスに始まり、マニエリズム、バロック、ロココ、新古典主義から近現代の絵画表現へと連なる流れの中で、北欧絵画に触れる機会は殆どないと言っても良い。極く最近では国立西洋美術館で「スケーエン:デンマークの芸術家村展」が開かれたりしているが、北欧と一括りにはできない風土の違いが空や海の色、人々の表情を捉える光に現れていて興味深い。そしてフィンランドの原風景にはユーラシア大陸から飛び出した半島の先にあるデンマーク・スケーエンの光は見られない。白夜の国の静かさが森と水面に表現されている。其処には表紙にも用いられているペッカ・ハロネンの雪の表現が川瀬巴水の版画表現に通じる処もみられ、フーゴ・シンペリの風景画も川瀬巴水の風景版画と共通する静寂さが感じられる。世界の中心になることを求めず、ゆったりと静かにコーヒーとシナモンロールを味わう、そんなひと時を支える自分好みのデザインがあれば尚更である。
フィンランド・デザイン展は現在愛知県美術館で5月28日まで開催中、その後、福井市美術館をへて、府中市美術館(9月9日〜10月22日)から宮城県美術館まで巡回。
本書目次
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フィンランドらしさ」とは何か── デザイン、建築、美術・工芸の根底を探る
第1章フィンランド・デザインの黄金期
くらしとデザイン── フィンランドの普遍性と独自性
□衣・住のためのテキスタイル
□食卓を彩る器とキッチン用品
□住まいの装飾と家具
Column
デザインを支えるフィンランドの企業──「デザインの原理」の正しい実践
国策としてのモダン・デザイン──「フィンランドらしさ」が世界に羽ばたく
第2章フィンランド・モダンの成立
□ナショナル・ロマンティシズムの現れ
□モダニズムの受容と展開
風土・文化に寄り添う独自のモダニズム
Column
サーリネンとアールトの建築ディテール
自然・人口の光をデザインする── 白夜と極夜の国で
第3章フィンランド・デザインの源流
北カレリアのイマジュリー―フィン人の原風景
□森と湖
□日常の風景
□物語『カレヴァラ』
Column
美術・産業工芸とカレリアニズムーフィンランドのものつくりの原点
パリ万国博覧会と芸術家たち── 芸術家コミュニティの形成へ
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そういえば、日本の建築家でアールトに影響を受けた建築家といえば吉武泰水に武藤章がその代表だろうか、アールトの国民年金局やヘルシンキ工科大学(現・アールト大学)等の煉瓦タイルの外壁と連窓による外部デザインのモチーフは吉武研究室による建築の随所に見られましたですね。