September 06, 2020

再読・ボローニャ紀行

ボローニャ紀行 (文春文庫)
と云うことで奥付を見ると2010年3月10日の初刷であるから、10年ぶりの再読である。その切っ掛けは、井上ひさし(1934/11/6〜2010/4/9)没後十年に因み、その命日の4月9日にNHK-BS-premiumのプレミアムカフェ 井上ひさしのボローニャ日記(2004年)が再放送されたのを見たことにある。
 本書のことは、すっかり忘れていたが...書棚を見ると黄色い背表紙の「ボローニャ紀行」が...おいでおいで、していた。
因みに本書購入の切っ掛けもakiさんのaki's STOCKTAKINGからだった。
久しぶりに頁をめくると、プロローグの「テストニーの鞄」に本書執筆の経緯がNHKの番組取材に渡りに船と応じたことから拡がり、番組内では伝えきれないことを「ボローニャ日記」から「ボローニャ紀行」へと深化させたものだ。

一つの番組から記憶が蘇り、2010年4月10日に『東京芸術大学・ボローニャ大学共同シンポジウム 日本とイタリアの歴史的都市--その保存と変容』を聴講した。その講演者の一人、ピエル・ルイジ・チェルヴェッラーティ氏について本書の「花畑という名の都市」でも取り上げている。シンポジウムで第2次世界大戦後、レジスタンスの街であったボローニャ市は地方自治にまで干渉するアメリカからの復興資金(マーシャル・プラン)を蹴って、自力で経済復興を成したこと等から、ロッソ・ボローニャと揶揄されると語っていたことを思いだした。
因みに紀行文学と云えばゲーテによるイタリア紀行があまりにも有名だが...1786年10月18日から20日までの三日間、ボローニャに滞在しているが...ナポレオンに略奪される前のラファエロの「聖チェチリア」には満足したようだが、大学にも、街にも...あまり関心を表していない...まぁ、心はローマに...飛んでいたようで、此処に長く居るつもりはない...と。

「ボローニャ方式」による施設

ウンベルト・エーコがプロデュースした古い家畜市場をリノベーションした老人から学生そして幼児までが一日過ごせる図書館

「チャップリン・プロジェクト」の章で語られたタバコ工場をリノベーションして造られた複合施設

因みに、2010年4月10日「東京芸術大学・ボローニャ大学共同シンポジウム 日本とイタリアの歴史的都市--その保存と変容」で、ボローニャ大学の教授に誰かが丹下健三のボローニャの副都心計画をどう思うか尋ねていたが。教授は多くを語らず「あれは...◇○●△▼×◇...」まぁ、忖度したのでしょうか、意味不明な答えでしたが、多くの聴衆は教授の反応から...市民がどう思っているか読み取ったようです。

ボローニャ紀行・目次

プロローグとなる「テストニーの鞄」から、さわりを...


2020年7月9日(木)放送プレミアムカフェ 井上ひさしのボローニャ日記(2004年)
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戦後復興 ボローニャ市民「四つの誓い」
一、復興のためには女性の力が必要である。そこで女性が安心して働くことができるような環境をつくるために、まず公共保育所を建てることにしよう。それが街づくりの第一歩である。
二、街の中心部の歴史的建造物と公害の緑は、市の宝物である。この二つはあくまで保存し、維持しよう。
三、「投機」を目的とした土地建物の売買は、おたがいに禁じ合おう。
四、市内の職人企業の工場については、業績がよくなっても増築しないようにしよう。どうしても増築したいときは、街の景観を守るために、熟練した職人による分社化を行なおう。
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参考

マガ9レビュー:ボローニャ紀行

Posted by S.Igarashi at September 6, 2020 10:22 AM
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