アメリカンドリームの終わり あるいは、富と権力を集中させる10の原理
本書は2015年に米国で公開されたドキュメンタリー映画・「Requiem for the American Dream」を元に2017年3月に米国で出版されたペーパーバックス版「Requiem for the American Dream: The 10 Principles of Concentration of Wealth & Power」の翻訳版(2017.10.15)です。残念ながら映画は日本では公開されておらず輸入盤のDVDかBlu-rayを字幕無しで見るしかない様です。帯にも書かれている『今日のアメリカは明日の日本だ』とは、数十年前から良く言われている事ですが...僕は世界的に同時進行していると思うし、本書は明日の日本ではなく、現在の日本、いや世界中の市民に対する警告ではないだろうか。
...と下書きのまま半年程そのままでいたら、次の本も出てしまったので、慌ててのエントリーです。
前書きの「アメリカンドリームはどこに?」から、その一部を抜粋。
わたしは年をとっているからよく覚えていますが、あの一九三〇年代の大恐慌当時の人々の気分、感情は、現在よりもはるかにひどいものでした。
けれども、わたしたちの気持ちのなかには、いつかこの大恐慌から抜け出すだろうという希望がありました。状況は必ずもっとよくなると、みんな思っていたのです。
「今日は仕事がないかもしれないが、明日には仕事があるだろう、だから力を合わせていっしょに働いて、もっと明るい未来をつくり出すことができる」という期待です。
……中略……
ところが、現在、そのようなものは全く消えてしまって見当たりません。いま人びとのなかに広がっているのは、「もう何も戻ってこない、すべては終わった」という感情です。
……中略……
いまや、社会的地位が上昇する可能性はヨーロッパと比べてもぐっと低くなっています。
……中略……
富の不平等は、過去に前例がないほどひどくなっています。
……中略……
似たような時期は過去にもなかったわけではありません。たとえば、1890年代の「金ぴか時代」や1920年代の「怒(ど)濤(とう)の20年」などです。そのときの状況は現在と非常に近いものでした。けれども、いまのアメリカはそれをはるかに超えるものになっています。富の分配の不平等は、超富裕層(人口の0.01%)という大金持ちに起因しているのです。
……中略……
アメリカンドリームの重要な部分は、階級の流動性です。貧乏な家に生まれても刻苦勉励(こっくべんれい)すれば豊かになれる、というものです。 すべての人がきちんとした仕事を手に入れることができ、家を買うことができ、 車を手に入れることができ、子どもを学校に行かせることができるというものです。 けれどもいまや、そのすべてが崩壊してしまっているのです。
目次
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アメリカンドリームはどこに?
建国以来の下劣で恥ずべき行動原理
富と権力の悪循環
下劣で恥ずべき行動原理
原理1 民主主義を減らす
富裕層という少数者
貴族政体論者と民主政体論者
不平等を減らす二つの方法
アメリカ社会の罪
対抗する二つの流れ
原理2 若者を教化・洗脳する
民主主義の行き過ぎ?
教育と教化・洗脳
批判的言論人への避難・糾弾
国益とは何か
原理3 経済の仕組みを再設計する
金融機関の役割の変化
経済の金融化
製造業の海外移転
自由貿易協定の真の狙い
労働者を不安定な地位に追い込むこと
金融化と海外移転に対抗する闘い
原理4 負担は民衆に負わせる
プルトノミー(金持ち経済圏)とプリケアリアート(超貧困階級)
金持ち減税
税金の負担を富裕層にも担わせる闘い
原理5 連帯と団結への攻撃
公教育への攻撃
公的医療制度への民営化
政府というものを消し去る
連隊と団結への復帰
原理6 企業取締官を操る
グラス=スティーガル法
政界と財界を自由に往き来できる「回転ドア」
ロビー活動(議会工作)
規制緩和と金融崩壊
大きすぎて牢屋に入れられない
「企業社会主義」の国家
「外部性」と制度上の危機
市場原理主義--市場にすべてを任せろ、自由競争にすべてを任せろ
原理7 大統領選挙を操作する
法人という名の人間
企業のお金で買われた選挙
真に重要なのは投票後の地道な活動
原理8 民衆を家畜化して整列させる
ニューディール政策
家財界の反撃
経営者の「新しい時代精神」
階級意識
原理9 合意を捏造する
広報宣伝産業の勃興
消費者の捏造
非合理的・非理性的な選択
選挙の土台を掘り崩す
大統領候補者を売り出す
原理10 民衆を孤立させ、周辺化させる
怒りの間違った標的
人間は「種」として存続できるか
政府の存在は自動的に自己を正当化するものではない
変革
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書評
2017年10月28日:長周新聞・『アメリカンドリームの終わり ーあるいは、富と権力を集中させる10の原理』 著 ノーム・チョムスキー
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大正末期、六代目三遊亭圓生(1900〜1979)が三遊亭圓窓から橘家圓蔵を襲名した時分だから25歳位だろう、その頃から始められた落語勉強会「橘会」を後援する会員の一人に、圓生より七歳年上の川瀬巴水(1883〜1957)がいて、何かと支援を受けられていたと云う話しが圓生の「浮世に言い忘れたこと (小学館文庫)」「寄席こしかた/あたくしの勉強会 」に書かれていた。そんなエピソードを知ると巴水の「東京二十景 芝増上寺」 1925年(大正14年)を描いていた頃、同じ芝の三光亭で行なわれていた落語勉強会「橘会」にも巴水は顔を出していたことだろう、芝露月町(現・新橋五丁目)生れの巴水にとって芝増上寺界隈は日常の風景そのものであったことだろう。そう考えると何となく巴水の版画を見る目にも奥行きがでてくる。
どうやら、三遊亭一門は若手育成のため自ら席亭を設ける傾向があるようだ、尤も金儲けを第一優先としない席亭の運営は順調とは云えず、芝の三光亭も青山に移転したり、流浪の日々の末、消滅したようである。圓生の弟子の円楽も自分の席亭「若竹」を潰したり、好楽も「池之端しのぶ亭」を設けたりするのも...一門に伝わる遺伝子かも...。
川瀬巴水は東海道に面した芝露月町の生れ、成人した後、芝愛宕下町で所帯を持つ、大正15年に大森新井宿美奈見に転居。大阪生まれの圓生は義父となった先代圓生の住む芝佐久間町で少年から青年時代を過ごした様である。芝の三光亭は先代圓生の住いを兼ねた席亭であった様だが、震災で火災にあい焼跡に住い兼席亭のバラックを建て、其処で落語勉強会を行っていたが、其処も震災後の区画整理で立ち退きざるを得なくなったと云うことだ。
川瀬巴水が圓生を伴い鮫洲の伊東深水の家に行ったというエピソードも書かれているが、巴水がが大森に転居する前か、後かは不明だが...文化人と云われる人達が大森界隈に住み始めたのは震災後なのだろう。巴水が日本各地や朝鮮に旅をして歩き回ったのも、日本橋を起点とした東海道に面した新橋で生まれ育ったことも、大きな要因かも...。
と云うことで、この本は探していた本がなくて、なんとなく買ってしまった二冊の文庫本の一冊である。
落語が日常生活の娯楽の一翼を担っていた時代の下町の端っこで生れ、物心が付いた頃には母親に連れられ新橋演舞場や明治座に御供している所為か、落語、講談、浪曲、新派の口調等が、身体感覚に刷り込まれている様だ。昔、後輩が「古典落語の本を読んでも面白くもなんともない。」と抜かしていたのを聞いて。可哀相に彼には紙に書かれた落語の行間から落語家の声が聴こえないのだろう、と気の毒に思い、言わせるままにして放っておいた。音楽家がスコアを見ただけで頭の中で音楽が鳴り響くよう、古典落語の文庫でも読み始めると贔屓の落語家による独演会が頭の中で聴こえてくる。それも、かろうじて名人を生で聴くことが出来た最後の世代の特権かも知れない。
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「浮世に言い忘れたこと」 目次
【人情浮世床】
乞食になっても / わが身に合った工夫を / お銭をいただくからには / 理屈ではわかっていても
箱に入るな / 芸に終わりなし / 気転をはたらかせること / 高座はこわい / 骨をおぼえろ
逆境のときこそチャンス / 他芸を習え / 落語と歌舞伎 / 遺 産 / お色気のはなし
【寄席こしかた】
寄席の今昔 / 落語の歴史 / 落語の将来 / 時代の波 / 江戸の春 / 噺家の正月 / 年中貧乏
初いびき / 噺家珍芸会 / あたくしの勉強会 / 夏の雑音 / 忘れられない正月
【風狂の芸人たち】
奇人・圓盛のこと / 名人・圓喬のこと / 一柳斎柳一のこと / 名人・神田伯山のこと
一龍斎貞山のこと / 立花家橘之助のこと / 玉乗り遊六のこと / しゃべり殺された潮花
金語楼のこと/志ん生のこと
【本物の味】
一年の計 / 今の世の中 / 社会屋 / 我 慢 / 夏負け /敬 語 / 手 紙 / ああ、名医なし
本を読むとき / 着物と着こなし / らしいなり / あたくしの朝食 / あたくしのぜいたく
知らない料理 / うまいもの / 郷土恋味 / そ ば / ふ ぐ / くさや / さんま
あたくしの酔いかた / 煙草のけむり
【解説】 自分をこしらえる本 童門 冬二
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関連:志ん生の右手