November 01, 2005

the CORPORATION

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ロードショー公開する前に希望するブロガーに本編を見せてしまうという映画がある。今日はその試写会を見に渋谷のアップリンクまで行ってきた。試写会招待の条件は自分のブログに記事を書き配給会社にトラックバックすると云うものだ。映画の原作はジョエル・ベイカンのザ・コーポレーションである。映画は「NO LOGO」ブランドなんか、いらないのナオミ・クラインやノーム・チョムスキー、そしてマイケル・ムーア等、各界40人のインタビューによって構成されている。10月11日付けの東京新聞夕刊・マネーゲーム勝者は「怖いもの知らず」と題し、マネーゲームに勝ち抜くための条件が「サイコパス」の特性に酷似しているとのスタンフォード大学とカーネギー・メロン大学の共同研究を伝えている。映画「ザ・コーポレーション」は企業の実態を精神分析そしてサイコパス(人格障害)と診断を下した。その分析テストとは以下のようなものだ。
□他人への思いやりがない。
□人間関係を維持できない。
□他人への配慮に無関心。
□利益のために嘘を続ける。
□罪の意識がない。
□社会規範や法に従えない。
制作はカナダ、上映時間は2時間25分だが長いとは感じなかった。

映画で取り上げられている主なエピソード
○ボリビアの水道民営化を阻止した民衆運動
○ホンジュラスの労働搾取工場の実態
○インターフェース社の環境への取り組み
○ロイヤル・ダッチ・シェルの公害問題
○内部告発の値段:フォックス・テレビの事例
○ギャップ社の不当労働疑惑
○遺伝子組み換え食品に対するインドの環境保護運動家たちの取り組み

他にもIBMがナチス・ドイツの捕虜収容所の捕虜の(パンチカードによる)管理業務に加担していた疑いや、戦後日本でのDDT散布でジャップと云う差別語が飛び交う米国国内向けニュースフィルム等、差別、偏見、搾取、環境破壊等々、企業が犯す罪を事例をあげて糺している。

ノーム・チョムスキーは語る『民営化とは、公共機関を善良な人に譲ることではない。専制政治へそれを委ねることです。公共機関には利点もあった。損することも出来ます。別の利点があれば、損をしてもよかったのです。もし、国営の製鉄会社が損をしたら、他の業界へ安く鉄を売ればそれで済むのです。公営企業には後ろ盾がある。不景気でも従業員を雇え、そのために消費も伸び、景気回復につながるのです。しかし、民間企業では解雇せざるを得ません』

中南米ボリビアの米国企業・ベクテル社による水道事業の民営化では民家の屋根に降った雨も企業に権利があり市民は雨水さえも自由に飲むことが許されなかった。
民営化とはそういうものだ。いつか、道路も、川も、海も、空も、空気も、誰かの独占物となってしまうのだ。それは個人の命も自分のものではないことを意味する。既に米国では月の土地や火星の土地を売って金儲けしている輩がいる。彼らをサイコパスと言わずに何て言えばよいのだろうか。

一つの救いはケミカル系カーペット製造企業・インターフェース社CEOレイ・アンダーソンである。彼は過去において自社の製品が資源を搾取し環境を破壊していたことを認め、自らを有罪とし、資源のリサイクルを推進し、2020年までに100%持続可能(サスティナブル)な企業に生まれ変ることを宣言した。

かつて、JFKの父・ジョセフは金儲けの秘訣は法律で禁止される前に行動することだ、と嘯いていたが、JFKの暗殺は金融恐慌の時代に父・ジョセフによって煮え湯を飲まされ、無一文となった者たちの犯行と見るのは穿ち過ぎだろうか、この映画から何となくそんなことを考えてしまった。

"the CORPORATION"は資本主義社会を生き抜くためのサバイバル映画と云うことだ。

追記:民営化を英和辞典で調べると次の通りである。(Privatization:1 〈公的なものを〉私的目的に使う, 私物化する.2 〈公有[国有]の企業?財産などを〉民営[民有]化する, 私営[私有]化する.)
民営化には公有財産の市民による共有化と云う概念は含まれていない。つまり、公有財産を私的企業が独占するということである。

Posted by S.Igarashi at November 1, 2005 10:31 AM
コメント

行ってきましたよ。ありがとうございました。面白かった、しかし、テンポの速いインタビューの切り替えが、字幕を追う日本人にはちょっとつらくて、一時ひどく眠くなりました。決してヒットしそうもないこういう映画を知ってもらうためにblogが役立つとすればいいですね。

Posted by: 玉井一匡 at November 16, 2005 08:16 AM

昨日見てきました。
内容の濃い、というか幾重にも複層化している映画で
1回見ただけではなかなかその全体像をつかみきれないという印象もありました。が、消費社会に流される、欲望のおもむくままに生きている、そういう人に、まずは自分がならないこと。そして、一人でも多くの人たちがそうならないこと。そのための有効なヴィジョンがここにはあると思いました。

Posted by: fuRu at November 15, 2005 03:50 PM

「日本郵政株式会社」の初代社長に三井住友銀行前頭取の西川善文氏と云うニュースは最悪のシナリオの序章ですね。

Posted by: iGa at November 12, 2005 10:40 PM

11月10日付け東京新聞に「映画館“バブル”を生き抜く」と題して渋谷のミニシアターの奮闘ぶりが紹介されてます。その中にアップリンクの社長の話もあります。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20051110/mng_____thatu___000.shtml

Posted by: iGa at November 10, 2005 08:47 PM

14日は3人揃って映画鑑賞+αですね。

Posted by: iGa at November 5, 2005 09:00 PM

玉井さん同様
iGaさんとAKiさんのブログを読んで数日前に申し込みました。
そしたら、今日、お返事が来ていました。
ちょっと先になりますが、見に行ってきます。

Posted by: fuRu at November 5, 2005 12:02 AM

トラバを宣伝に使うとは...
さすがはUPLINK...(^^)
DR9は公開しないのか...

Posted by: T.Takahashi at November 4, 2005 01:14 PM

玉井さん、多少遅れることがあっても返事はきます。
試写会は40〜50人くらい入るホールに10人程度の観客でしたので大丈夫でしょう。メディア関係の人は空いていれば試写会当日でもOKみたいな印象でした。

Posted by: iGa at November 2, 2005 01:16 PM

ふたつのBlogを読み、早速申し込みましたが、返事はくるでしょうか。
おもしろい試みだし、映画の内容も楽しみです。

Posted by: 玉井一匡 at November 2, 2005 12:44 PM

先週の木曜日の試写会に行こうと考えてたのですが、朝から雨が降っていたので体調を考慮して取りやめて昨日の試写会に行きました。最近エントリーする時にエラーが発生するのでトラックバックできるか心配したが、無事、アップリンクにトラックバックできミッション遂行。
昼間なら、8、9日にも試写会がありますね。夜なら、そのまま併設されているカフェレストランで一杯やれます。渋谷周辺にはミニシアターが多いけれど、その中でもここは新しいタイプのミニシアターで、オープンな印象を受けます。そういえばアップリンクはアーキグラムや"Landscape of Architectures"とかの建築系のDVDもリリースしてました。

Posted by: iGa at November 2, 2005 11:22 AM

こういう地味な映画の宣伝として、ブログを活用するというのは、なかなか今風、面白いですね。ブログの機能であるトラックバックは、こんな為にあるんだと言われているみたいです。
遅ればせながら、このエントリーを見て試写会を申し込みました。ちょっと先、14日夜の試写会で見られます。

Posted by: AKi at November 2, 2005 10:22 AM