March 25, 2018

アメリカンドリームの終わり

アメリカンドリームの終わり あるいは、富と権力を集中させる10の原理
本書は2015年に米国で公開されたドキュメンタリー映画・「Requiem for the American Dream」を元に2017年3月に米国で出版されたペーパーバックス版「Requiem for the American Dream: The 10 Principles of Concentration of Wealth & Power」の翻訳版(2017.10.15)です。残念ながら映画は日本では公開されておらず輸入盤のDVDかBlu-rayを字幕無しで見るしかない様です。帯にも書かれている『今日のアメリカは明日の日本だ』とは、数十年前から良く言われている事ですが...僕は世界的に同時進行していると思うし、本書は明日の日本ではなく、現在の日本、いや世界中の市民に対する警告ではないだろうか。
...と下書きのまま半年程そのままでいたら、次の本も出てしまったので、慌ててのエントリーです。

前書きの「アメリカンドリームはどこに?」から、その一部を抜粋。

わたしは年をとっているからよく覚えていますが、あの一九三〇年代の大恐慌当時の人々の気分、感情は、現在よりもはるかにひどいものでした。
けれども、わたしたちの気持ちのなかには、いつかこの大恐慌から抜け出すだろうという希望がありました。状況は必ずもっとよくなると、みんな思っていたのです。
「今日は仕事がないかもしれないが、明日には仕事があるだろう、だから力を合わせていっしょに働いて、もっと明るい未来をつくり出すことができる」という期待です。
……中略……
ところが、現在、そのようなものは全く消えてしまって見当たりません。いま人びとのなかに広がっているのは、「もう何も戻ってこない、すべては終わった」という感情です。
……中略……
いまや、社会的地位が上昇する可能性はヨーロッパと比べてもぐっと低くなっています。
……中略……
富の不平等は、過去に前例がないほどひどくなっています。
……中略……
似たような時期は過去にもなかったわけではありません。たとえば、1890年代の「金ぴか時代」や1920年代の「怒(ど)濤(とう)の20年」などです。そのときの状況は現在と非常に近いものでした。けれども、いまのアメリカはそれをはるかに超えるものになっています。富の分配の不平等は、超富裕層(人口の0.01%)という大金持ちに起因しているのです。
……中略……
アメリカンドリームの重要な部分は、階級の流動性です。貧乏な家に生まれても刻苦勉励(こっくべんれい)すれば豊かになれる、というものです。 すべての人がきちんとした仕事を手に入れることができ、家を買うことができ、 車を手に入れることができ、子どもを学校に行かせることができるというものです。 けれどもいまや、そのすべてが崩壊してしまっているのです。

目次
------------------------------------------------------------------------------
アメリカンドリームはどこに?
建国以来の下劣で恥ずべき行動原理
 富と権力の悪循環
 下劣で恥ずべき行動原理

原理1 民主主義を減らす
 富裕層という少数者
 貴族政体論者と民主政体論者
 不平等を減らす二つの方法
 アメリカ社会の罪
 対抗する二つの流れ

原理2 若者を教化・洗脳する
 民主主義の行き過ぎ?
 教育と教化・洗脳
 批判的言論人への避難・糾弾
 国益とは何か

原理3 経済の仕組みを再設計する
 金融機関の役割の変化
 経済の金融化
 製造業の海外移転
 自由貿易協定の真の狙い
 労働者を不安定な地位に追い込むこと
 金融化と海外移転に対抗する闘い

原理4 負担は民衆に負わせる
 プルトノミー(金持ち経済圏)とプリケアリアート(超貧困階級)
 金持ち減税
 税金の負担を富裕層にも担わせる闘い

原理5 連帯と団結への攻撃
 公教育への攻撃
 公的医療制度への民営化
 政府というものを消し去る
 連隊と団結への復帰

原理6 企業取締官を操る
 グラス=スティーガル法
 政界と財界を自由に往き来できる「回転ドア」
 ロビー活動(議会工作)
 規制緩和と金融崩壊
 大きすぎて牢屋に入れられない
 「企業社会主義」の国家
 「外部性」と制度上の危機
 市場原理主義--市場にすべてを任せろ、自由競争にすべてを任せろ

原理7 大統領選挙を操作する
 法人という名の人間
 企業のお金で買われた選挙
 真に重要なのは投票後の地道な活動

原理8 民衆を家畜化して整列させる
 ニューディール政策
 家財界の反撃
 経営者の「新しい時代精神」
 階級意識

原理9 合意を捏造する
 広報宣伝産業の勃興
 消費者の捏造
 非合理的・非理性的な選択
 選挙の土台を掘り崩す
 大統領候補者を売り出す

原理10 民衆を孤立させ、周辺化させる
 怒りの間違った標的
 人間は「種」として存続できるか
 政府の存在は自動的に自己を正当化するものではない
 変革
------------------------------------------------------------------------------
書評
2017年10月28日:長周新聞・『アメリカンドリームの終わり ーあるいは、富と権力を集中させる10の原理』 著 ノーム・チョムスキー

関連
May 29, 2014:コーポラティズムの暴走...
July 29, 2013:知の逆転
November 01, 2005:the CORPORATION
June 26, 2005:チョムスキー9.11 Power and terror

マニフェスト・デスティニー

Posted by S.Igarashi at March 25, 2018 10:15 AM
コメント