June 03, 2017

フィンランド・デザインの原点 ―くらしによりそう芸術

2012年・夏の「フィンランドのくらしとデザイン」展から五年、フィンランド独立100周年記念の巡回展「フィンランド・デザイン展」の図録「フィンランド・デザインの原点 ―くらしによりそう芸術」が宇都宮美術館・主任学芸員の橋本さんの手により刊行されたことをFBで知った。9月に開催される府中市美術館の展覧会に先立ちAmazonより入手した。因みに右は2012年の「フィンランドのくらしとデザイン展」の図録です。フィンランド独立100周年と云うことは1917年のロシア革命から100年ということでもあるが...。

僕にとって「フィンランド・デザイン」と聞いて先ず最初にイメージするのはやはり「アールト」の建築と家具だろう。そしてマリメッコのファブリックとかイーッタラにアラビアの食器...そして近年ではNokiaだろうか。2008年にiPhoneにするまでは3台のNokiaを乗り換えて使っていた。その程度の認識しか持ち合わせていなかった自分にとって2012年の宇都宮美術館で観た「フィンランドのくらしとデザイン展」は目に新鮮だった。
イタリア・ルネッサンスに始まり、マニエリズム、バロック、ロココ、新古典主義から近現代の絵画表現へと連なる流れの中で、北欧絵画に触れる機会は殆どないと言っても良い。極く最近では国立西洋美術館で「スケーエン:デンマークの芸術家村展」が開かれたりしているが、北欧と一括りにはできない風土の違いが空や海の色、人々の表情を捉える光に現れていて興味深い。そしてフィンランドの原風景にはユーラシア大陸から飛び出した半島の先にあるデンマーク・スケーエンの光は見られない。白夜の国の静かさが森と水面に表現されている。其処には表紙にも用いられているペッカ・ハロネンの雪の表現が川瀬巴水の版画表現に通じる処もみられ、フーゴ・シンペリの風景画も川瀬巴水の風景版画と共通する静寂さが感じられる。世界の中心になることを求めず、ゆったりと静かにコーヒーとシナモンロールを味わう、そんなひと時を支える自分好みのデザインがあれば尚更である。
フィンランド・デザイン展は現在愛知県美術館で5月28日まで開催中、その後、福井市美術館をへて、府中市美術館(9月9日〜10月22日)から宮城県美術館まで巡回。

本書目次
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フィンランドらしさ」とは何か── デザイン、建築、美術・工芸の根底を探る

第1章フィンランド・デザインの黄金期
くらしとデザイン── フィンランドの普遍性と独自性
□衣・住のためのテキスタイル
□食卓を彩る器とキッチン用品
□住まいの装飾と家具

Column
デザインを支えるフィンランドの企業──「デザインの原理」の正しい実践
国策としてのモダン・デザイン──「フィンランドらしさ」が世界に羽ばたく

第2章フィンランド・モダンの成立
□ナショナル・ロマンティシズムの現れ
□モダニズムの受容と展開
風土・文化に寄り添う独自のモダニズム

Column
サーリネンとアールトの建築ディテール
自然・人口の光をデザインする── 白夜と極夜の国で

第3章フィンランド・デザインの源流
北カレリアのイマジュリー―フィン人の原風景
□森と湖
□日常の風景
□物語『カレヴァラ』

Column
美術・産業工芸とカレリアニズムーフィンランドのものつくりの原点
パリ万国博覧会と芸術家たち── 芸術家コミュニティの形成へ
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そういえば、日本の建築家でアールトに影響を受けた建築家といえば吉武泰水武藤章がその代表だろうか、アールトの国民年金局やヘルシンキ工科大学(現・アールト大学)等の煉瓦タイルの外壁と連窓による外部デザインのモチーフは吉武研究室による建築の随所に見られましたですね。

Posted by S.Igarashi at June 3, 2017 01:51 PM
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