「鉄学」概論
車窓から眺める日本近現代史:原武史著(新潮文庫)
東京人3月号にも寄稿している原武史氏の著作であるが、2009年にNHKで放送された「鉄道から見える日本...」のテキストを加筆修正しタイトルを改め文庫本に仕立て上げたもので、底本となったNHKのテキストより230円もお得である。
改めて録画しておいた第1回の放送を見て、本書第1章を読んでみると、つくづくテレビと云うモノは作者の筆力と受け手の想像力が希釈されるメディアだと感じた。もしかすると、放送に於いて原武史氏が終始仏頂面だったのは、鉄ちゃん系のヴァラエティ・タレントの如くスタジオ内の三等旅客車両のセットに座らされ、内心嬉しくて相好を崩したら、巷の鉄道オタクとは一線を画す学究の徒としての面目が潰れると頑なに冷静を装っていたのかも知れない。本書は放送では語り尽くせなかった著者の意図を読むことができる。
追記:どうやら、三等旅客車両のセットは「第7章 新宿駅一九六八・一九七四」に書かれた著者の少年時代の個人的体験を再現した物のらしい。著者は近現代史が専門のようですが...読み終えてみて、近代史の語り部としての説得力は感じるが、現代史の語り部としては...熟成されてない...何かが...あるように感じた。
内容
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はじめに
第1章 鉄道紀行文学の巨人たち
第2章 沿線が生んだ思想
第3章 鉄道に乗る天皇
第4章 西の阪急、東の東急
第5章 私鉄沿線に現れた住宅
第6章 都電が消えた日
第7章 新宿駅一九六八・一九七四
第8章 乗客たちの反乱
参考文献
解説 宮部みゆき
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1948.09.17の浅川驛