昨日は久しぶりに展覧会を梯子した。上野の国立西洋美術館のカラヴァッジョ展と東京ステーションギャラリーの「ジョルジョ・モランディ―終わりなき変奏」である。イタリアと画家と云う共通項以外、時代も何もかも違いすぎる二人だが…今年は日伊国交150周年と云うことで….Embassy of Italy in Tokyo。
と云うことで午前中の会議を終え、市ケ谷から秋葉原経由で上野へ、京浜東北線の車窓から須賀工業の看板が目に入る。これもルイジ・ギッリによるモランディのアトリエ写真が須賀敦子全集の表紙カバーに用いられていなかったら、見えてない風景であった筈だ。カラヴァッジョ展は3月1日から始まったばかりの平日なので、館内は自由行動の修学旅行生と時間に余裕のある年輩客が入っている程度なので、ゆっくり見る事ができた。カラヴァッジョ展とは云え、出品作品51点の内、カラヴァッジョの作品は12点のみ、尤も代表作の「聖マタイの召命」等、教会の祭壇画の類いは当然の事ながら持って来られる筈もなく、展示されているのは風俗画、静物、肖像、それに個人や美術館所有の宗教画の類いである。バロック絵画の黎明期と云われる16世紀後半から17世紀にかけて絵画が最先端のメディアとして、人間の欲望や憎悪に嫉妬をリアリティを持って描く様は今日の大衆写真週刊誌やワイドショーの様にも思え、エクスキューズとして其処に宗教が絡んでいる状況なのかな…。
そういえば、「神の園」をテーマパークとした世界劇場を仕上げるミッションを賜ったジャン・ロレンツォ・ベルニーニの作品が一点だけありました。それはクライアントでもありパトロンでもある教皇ウルバヌス8世の肖像画。或る意味、とてもバロック的に描かれていましたです。
上野を後にして山手線で東京駅に…久々の10年ぶりの東京ステーションギャラリーです。丸の内・北口改札を出て右のギャラリー・エントランスからエレヴェーターで3階に…
モランディの作品を見るのは初めてですが…何処か懐かしさを憶えます。ただモノ(静物)を描くのではなく、そのモノ同士の関係性やモノによって生じる空間を描いている。その端的な事例は対象となるモノを白抜きとして背景の空間を描いているエッチング作品の「テーブルの上の壺」だろう。
モランディは建築家にもインスパイアーを与えているようでフランク・ゲーリーのこの住宅もそうだろうと映画監督のシドニー・ポラックは主張しているらしい。
「逆さのじょうご」と題されたコーナーの作品を見て、そうかアルド・ロッシ・デザインのALESSIのケトルやエスプレッソメーカーはモランディへのオマージュなのだと直感した。図録の解説によれば金属製の円筒に逆さにした漏斗を溶接したモランディ手製の容器ということだ。アルド・ロッシの「都市の建築」アメリカ版初版への序文に添えられた望遠レンズによる「ニューヨーク、マンハッタン島、ダウンタウンの摩天楼」の写真はモランディの静物画の様にも見える。
東京ステーションギャラリー二階の出口を出ると、其処は丸の内・北口改札ホール・上部吹抜けのギャラリー(回廊)に出る。回廊を半周してから階段を下りれば北口改札の前、一番線の中央線ホームに上るエスカレーターは目の前...始発から終点も近く感じる。