May 29, 2015

妻を帽子とまちがえた男

妻を帽子とまちがえた男
自動車税を払う為に歩いて駅前の銀行とついでに郵便局にも行き、そのついでに古本屋に立ち寄った処で本書に遭遇、パラパラと頁を捲り中身を確認してそのまま会計…定価[本体2840円+税]の古書が内税込み価格で500円…新本と言われても納得してしまう程、状態が良い。Amazonで検索してみると、文庫本もハヤカワ・ノンフィクション文庫から出ているようだ。
オリバー・サックスについては映画『レナードの朝』は見ていたが、その名前はインタビュー集『知の逆転』を底本にNHK-ETVで二年前に放送された「世界の叡智(えいち)6人が語る 未来への提言」で知ったのだが、昨今の自称・脳科学者と異なり、自ら脳神経科の臨床医として患者に寄り添い、その治療体験を通して、人間の適応力の可能性を語る姿に興味を持っていた。本書はサックスの24の臨床体験に基づいて書かれたものである。

病気について語ること、それは人間について語ることだ―。妻の頭を帽子とまちがえてかぶろうとする男。日々青春のただなかに生きる90歳のおばあさん。記憶が25年まえにぴたりと止まった船乗り。頭がオルゴールになった女性…。脳神経に障害をもち、不思議な症状があらわれる患者たち。正常な機能をこわされても、かれらは人間としてのアイデンティティをとりもどそうと生きている。心の質は少しも損なわれることがない。24人の患者たち一人一人の豊かな世界に深くふみこみ、世界の読書界に大きな衝撃をあたえた優れたメディカル・エッセイ。(「BOOK」データベースより)
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第1部 喪失
1・妻を帽子とまちがえた男
2・ただよう船乗り
3・からだのないクリスチーナ
4・ベッドから落ちた男
5・マドレーヌの手
6・幻の足
7・水平に
8・右向け、右!
9・大統領の演説

第2部 過剰
10・機知あふれるチック症のレイ
11・キューピッド病
12・アイデンティティの問題
13・冗談病
14・とり憑かれた女

第3部 移行
15・追想
16・おさえがたき郷愁
17・インドへの道
18・皮をかぶった犬
19・殺人の悪夢
20・ヒルデガルドの幻視

第4部 純真
21・詩人レベッカ
22・生き字引き
23・双子の兄弟
24・自閉症の芸術家
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失った四肢の感覚が残っている状態を「ファントム(幻影肢)」と言うらしいが、事故等で失われた手足が疼いて痛いと云う話しは良く聴いた事がある。どちらかといえば「ファントム」は悪い作用をするものと考えられているが、「ファントム」を活かせば義足でも自分の足の如く動かすことが可能になるらしい、しかし「ファントム」が眠っていると歩くことはおろか立つことも叶わないそうで、義足を装着する前に先ずは「ファントム」を目覚ますことから始めなければ成らないそうである。しかし、「ファントム」が目覚めれば健常者と遜色ないと云う。人間の適応力の奥深さを感じる。

Posted by S.Igarashi at May 29, 2015 01:58 PM