October 25, 2012

ヒロシマの嘘

写らなかった戦後 「ヒロシマの嘘」
福島菊次郎・著
90歳になる報道写真家に迫ったドキュメンタリー映画・『ニッポンの嘘』のシナリオの底本となった本だが、これも著者が82歳の時の書き下ろしだ。この「写らなかった戦後」はシリーズ化され、2005年に『写らなかった戦後 2「菊次郎の海 」』が、そして2010年に『写らなかった戦後3「殺すな、殺されるな」 福島菊次郎遺言集』が出版された。そして、その半年後の3.11にメルトダウンが起こり、再び、彼を報道の現場へと向かわせた。
 戦後、地方都市で時計屋を営み趣味で写真を撮っていた市井の一個人が42歳にて報道写真家へと変身し、62歳で此の国の有り様に絶望し瀬戸内海の無人島に移り棲む...自身も癌に侵され満身創痍の身ながら、再び...カメラをペンに持ち替えて...此の国の欺瞞と矛盾に満ちた有り様を告発する。このエネルギーは何処から出てくるのだろうか。『見て見ぬフリをすることは主権の放棄へと繋がり、為政者を暴走させる。』...と彼は言う。全く以てそのとおりだ。
孫崎享が自身のツイッターで自署である「戦後史の正体」について肯定的評価を堂々と述べる人に共通している事は「覚悟を決めて生きている人」だと言っているが、福島菊次郎も「覚悟を決めて生きている人」だろう。孫崎享の「戦後史の正体」が米国からの圧力を軸に読み解いたモノならば、福島菊次郎の「写らなかった戦後」は国家から見捨てられた人々に寄り添い、底辺から読み解いた菊次郎による「戦後史の正体」だろう。当然ながら其処に「米国からの圧力」も透けて見えることは言うまでもない。

目次
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240秒しか写さなかったヒロシマ---まえがきに代えて

鵯 ピカドン、ある被爆家庭の崩壊二〇年の記録

鵺 原爆に奪われた青春
 ブラジルから来た被爆者、島原邦子さんの死
 原爆乙女の怒り「私には強姦してくれる男もいないの」
 広島妻の訴え--原爆孤児・野沢靖子さん(仮名)の青春

鶚 四人の小頭症と被曝二世・昭男ちゃんの死
 マーちゃんとミーちゃんとチーちゃん
 百合子ちゃん
 原爆医療の谷間で殺された被曝二世・昭男ちゃん

鶤 被爆二世たちの闘い
 親父を哀れな被爆者のまま死なせたくない--徳原兄弟の反逆
 被爆二世医師と内蔵逆位の青年たちが支えた病院

鶩 広島取材四〇年
 炎と瓦礫の街で
 虚構の平和都市誕生
 被爆者はそれでも生きていた、三〇人の証言
 天皇、慰霊碑「お立ち寄り」
 原爆スラム、その差別の構造
 ヒロシマの黒い霧、ABCCは何をしたか
 四〇万人の葬列
 重藤原爆病院長の苦悩

鶲 広島西部第一〇部隊、僕の二等兵物語

鷄 僕と天皇裕仁
 軍国主義教育….狂気の青年時代
 敗戦と天皇の戦争責任
 同級生の南京大虐殺
 福島二等兵の反乱
 満身創痍の玉砕

鷁 原爆と原発

鶻 カメラは歴史の証言者になれるか

あとがき
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Posted by S.Igarashi at October 25, 2012 09:09 AM
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