December 20, 2009

「谷沢川vs九品仏川」河川争奪戦


と云うことで昨日の土曜日はBE-WORKS の忘年会に併せ7th Earth diving.『 年末緊急企画・「谷沢川vs 九品仏川」河川争奪戦跡を検証する』と題してミニダイブを行ないました。まぁ忘年会会場となった「自由が丘・モッコ」が九品仏川の川跡に面していることもあり、折角の機会なので午後から河川争奪の現場検証に行こうということで...急遽実行。
上図のGoogleMapは徘徊予定ルート(青・5.65km)に実際に歩いた道順(赤・7.96 km)をNiijimaさんがGPSで記録、二つのマップを重ねたもの。


河川争奪戦については今年二月にエントリーした「 今夜のタモリ倶楽部・国分寺崖線を行く」で触れているのそちらを参照。
上図の凸凹地図を見ると「自由ヶ丘」と名乗っているけれど駅のある場所は丘ではなく低地なんですね。まぁ、ざっくりと武蔵野台地と言ってしまいますが、その台地の上に尾根や谷があって自由ヶ丘は荏原台と久ケ原台に挟まれた谷になっている訳ですが...「自由ヶ谷」では...ちょっとイメージが宜しくないと云うことでしょう。で東急大井町線はその荏原台と久ケ原台に挟まれた谷と云うか台地上の低地を東西に走り、久ケ原台の切り通しを抜けて二子玉川まで延びてます。ですから久ケ原台の尾根道である環八に面する上野毛の駅は切り通しに設けられている訳ですね。東横線の自由ヶ丘駅ホームが荏原台と久ケ原台に架かる高架駅になっているのも凸凹地図を見ると納得できますね。

九品仏池(クリックで拡大)昭和12年頃・帝都地形図より引用
浄真寺裏の九品仏池がいつ頃に造られたのか調査不足で解りませんが昭和4年(1929)年の地形図には影も形もありませんが、左図の昭和12〜14年頃の地形図には九品仏池があり、昭和30年(1955)の地形図にもまだ九品仏池があります。浄真寺と九品仏池の間の墓所には「増上寺専属墓地」とあります。増上寺といえば将軍家の菩提寺でもありますが、宗派は浄真寺と同じ浄土宗です。奥沢城の落城から略90年後、江戸時代の延宝6年(1678年)に建立されたということですから、当然将軍家の意向も働いていたことでしょう。
さて浄真寺の舌状台地囲む低地であるが、嘗ては水量を蓄えた九品仏川が蛇行しながら流れていたはずであるが、谷沢川にその流れを奪われた名残川となってから、台地からの湧水が僅かの水源になっていたようで、川と云うよりも湿地帯の様相を示していた様である。その低地は明治14年の地形図では荒地として表示され、昭和4年の地形図では水田、昭和12〜14年の地形図では区画整理が進み、再び荒地となり、浄真寺西側の低地は湿地帯となっている。どうやら九品仏池とその北西側の溜池は郊外住宅地としての整備に伴う区画整理の一環として設けられ、水害から低地の住宅地を守る調整池の役割を担っていたのではないだろうか。

九品仏池の跡(クリックで拡大)現在
昭和31年12月1日に開館した渋谷東急文化会館の排出残土により埋め立てられ宅地化されたと云うことから、昭和30年の後半には埋め立てが始まっていたのだろう。現在、浄真寺西側の住宅地を南北に走る緑道は嘗ての整備された水路跡である。その水路の水源となったのは九品仏駅の南西付近(九品仏小学校の北側に30m位)で舌状台地がくびれている谷頭と見られる。


等々力ゴルフ橋付近(クリックで拡大)昭和12年頃・帝都地形図より引用
河川争奪の結果、負けた川は流れが逆になり「逆川」と呼ばれることが多いようだ。


追記:関連エントリー
Across the Street Sounds: petit-earthdiving091219(1)
Across the Street Sounds: petit-earthdiving091219(2)
aki's STOCKTAKING:JEDI / 7th Earth diving
BLOWIN' IN THE WIND:Earth Diving に初参加
MyPlace:等々力渓谷から九品仏:第7回アースダイビング
ONE DAY:第7回アースダイビング 『「谷沢川vs九品仏川」河川争奪戦跡を検証する』
af_blog:7th Earth diving

Posted by S.Igarashi at December 20, 2009 02:17 PM
コメント

玉井さん、どうもです。

Google Earthに明治の「迅速測図」をオーバーレイするのも面白うございます。

Posted by: iGa at December 24, 2009 10:41 AM

コメントの投稿ボタンを押し忘れていました。今回もまた、周到な資料をありがとうございました。
ぼくもエントリーしましたが、いろいろな発見とさまざまな疑問が収穫できました。GoogleMapsへの愛情が、またしても深くなるダイビングでした。
じつは、ぶらタモリをついつい見忘れてしまい、まだ見たことがありません。こんどはぜひとも見ようと思っています。

Posted by: 玉井一匡 at December 24, 2009 08:56 AM

iGaさま。

ありがとうございました。

alpshima

Posted by: alpshima at December 23, 2009 11:22 AM

ski さま、どうもでした。

いや、九品仏池の埋め立てに渋谷東急会館からの残土処分等が使用されたとか地元民だからこそ、知っていたエピソードなどありがとうございました。昭和30年発行の地形図には未だ池がありますが、ウィキペディアで調べてみると渋谷東急文化会館が開館したのが昭和31年12月1日と云うことですから、昭和30年には既に埋め立てが始まったと云うことでしょうね。

Posted by: iGa at December 22, 2009 07:01 PM

iGA様。

途中からですが、初めてアースダイビングに参加させていただきありがとうございました。八沢川と九品仏川がそんな関係にだったとか、九品仏池の位置関係がなるほどこういうところにあったなどがわかり大変興奮しました。akiさんから資料をいただき翌日義理の父に見せました。そうそうという感じで昔を懐かしんでいました。今度はぜひ最初から参加させてください。本当にいい資料でした。作成ご苦労様でした。

Posted by: ski at December 22, 2009 05:16 PM

alpshimaさま、先日は有り難うございます。
akiさんも無事に帰宅されました。

凸凹地図の作成には国土地理院発行の数値地図「5mメッシュ」と「5mメッシュ」のデータが必要です。
http://www.gsi.go.jp/MAP/CD-ROM/cdrom.htm#09
そのデータを読込むソフトも必要で
Windowsの場合は「カシミール」
http://www.kashmir3d.com/
Macの場合は「数値地図ビューア」となります。
http://www.jizoh.jp/pages/download.html

そんな手間は面倒と云う場合はGoogle Earth上でTokyoTerrainを用いるのが良いと思います。
http://www.gridscapes.net/

TokyoTerrainは拙ブログでも10月22日にエントリーしました。
http://madconnection.uohp.com/mt/archives/001891.html

Posted by: iGa at December 22, 2009 01:41 PM

iGAさま。

皆さんがすっかり絶頂な時間にたどり着き、乗り遅れてしまいました。冊子をいただきありがとうございます。
さて、冒頭に登場する台地のマップはどのように入手すればよろしいのでしょうか。

alpshima

Posted by: alpshima at December 22, 2009 12:53 PM