21日の土曜日は午前中に大学で打合せ、夜から始まるライブまでの時間を有効に潰すため、久々に神保町の岩波ホールに行き、山里近くのシネコンでは上映されることのないアニエス・ヴァルダのアニエスの浜辺を何の予備知識もないまま見た。原題はフランス語で"LES PLAGES D'AGNES"と云うらしいが英訳すると"RANGES OF AGNES"となり、この邦題は何だかな...と思う。プロローグの映像は(世界に開かれた)浜辺に大小幾枚もの(世界を写す、或いは世界を切り取る)鏡を置く処から始まっている。写真の世界から映像作家(映画監督)に転身したアニエス・ヴァルダの80年の生涯をコラージュ風と云うかグラフティ風と云うか、そんな映像作品に仕立て上げているのだが、masaに"RANGES OF AGNES"に関わった人達や敬愛する人々や作品やら何やらが次から次と登場する。60年代のヌーベルバーグ、70年代アメリカのニューシネマ等をリアルタイムで観てきた者なら、ニヤリとさせられる場面も其処彼処にあって、それだけでも楽しめる。秀作である。