10年前の1996年6月5日にリリースされたToru Takemitsu Requiemは、その年の2月に亡くなった武満徹へ捧げる追悼盤である。内容は遺作となった「エア(フルートのための)」で始まり、「系図-Family Tree」、「エクリプス」、代表作の「ノヴェンバー・ステップス」、そしてストラビンスキーに認められた出世作であり武満徹の原点とも云える「弦楽のためのレクイエム」で終わっているが、全体を通して聴いてみると恰も一つの変奏曲のようにも聴こえてくる。
アルバム収録の『系図-若い人たちのための音楽詩(Family Tree - Musical Verses for Young People)』は「むかしむかしわたしはいた」のフレーズで始まり、「でもわたしはきっとうみよりももっととおくへいける」のフレーズで終わる音楽詩である。テキストは谷川俊太郎による詩集「はだか」より六篇の詩を元に武満徹によって再構成されている。1995年春のN饗による日本初演では15歳の遠野凪子が朗読している。このアルバムに収録されている"Family Tree "は1995年秋の小沢征爾指揮、サイトウ・キネン・オーケストラによるもので朗読は遠野凪子、武満徹が亡くなる半年前の演奏だ。そして没後一年の1997年6月18日にシャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団による再演がNHK芸術劇場(左図)で放送されている。
六篇の詩、むかしむかし(Once upon a time)、おじいちゃん(Grandpa)、おばあちゃん(Grandma)、おとうさん(Dad)、おかあさん(Mom)、とおく(A Distant Place)、は全て少女の一人称で語られている。この"Family Tree "を聴きたくなったのは映画もんしぇんを見たからだろう。嘗て生きていた人、いま生きている人、未来を生きる人、世界はそうした名も無い多くの人々の命の絆で成り立っている。だから、、、
武満徹の理解者でもあった指揮者の岩城宏之氏が本日未明に亡くなりましたね。
日曜日の武満徹トリビュートコンサートは岩城宏之氏の追悼コンサートになりそうです。合掌。