May 31, 2005

神さまがくれた漢字たち

神さまがくれた漢字たち
白川 静・監修、山本 史也・著、理論社YA新書
"腰巻き"の白川 静氏の推奨文の通りである。出だしから説教魔の蘊蓄オヤジと化した金八先生が言いそうな「え、人という字は、人と人が支え合って形作られたものです。」と云った定説を真っ向から否定している。漢字の起源は紀元前1300年、今から3300年前の殷の時代につくられたものとされている。したがって、古代中国の支配の仕組みから、神と民衆の間に立つ媒介者としての王が、神との交信に用いる方法の一つが漢字であるとすれば、その時代背景抜きに漢字を理解することは覚束ない。それがタイトルの由来のようだ。

それで問題の「人」であるが、山本 史也氏は「哀れな人」と題し、支え合う人という定説を否定した上でこう述べている。

「人」の字形は、もとはすこし首をすくめた人を横から見る形で示されました。もっとも後漢の許慎の著した字書「説文解字」は、「人」を「天地の性、最も貴き者なり」と解説するのですが、どうしても「万物の霊長」を思わせるような尊い人の風貌を写す形とは見えてこないのです。かえって何かに服従してでもいるような、あるいは重いものをひしひしと背に感じてでもいるような、心なしか、うつむきかげんの姿勢を写しとった形にも見えてきます。

hitomoji.jpg確かに山本 史也氏の述べるように見えるが、視点を変えればこれは正に直立猿人(Pithecanthropus erectus)ではなかろうか。そう考えた途端にミンガスの音楽が頭の中で鳴り始めた。「人」の字形はサルからヒトへの進化の過程を示す図解に表わされている直立猿人そのものではないだろうか、そう考えれば二足歩行を始めたことを「人」の起源とする自然科学とも合致してくる。つまり「人」の字形は科学的思考に基づいているのであろう。恐るべし中国3300年の歴史。(象形文字は白川静・常用字解より引用)

Posted by S.Igarashi at May 31, 2005 09:48 AM | トラックバック