神さまがくれた漢字たち
白川 静・監修、山本 史也・著、理論社YA新書
"腰巻き"の白川 静氏の推奨文の通りである。出だしから説教魔の蘊蓄オヤジと化した金八先生が言いそうな「え、人という字は、人と人が支え合って形作られたものです。」と云った定説を真っ向から否定している。漢字の起源は紀元前1300年、今から3300年前の殷の時代につくられたものとされている。したがって、古代中国の支配の仕組みから、神と民衆の間に立つ媒介者としての王が、神との交信に用いる方法の一つが漢字であるとすれば、その時代背景抜きに漢字を理解することは覚束ない。それがタイトルの由来のようだ。
それで問題の「人」であるが、山本 史也氏は「哀れな人」と題し、支え合う人という定説を否定した上でこう述べている。
「人」の字形は、もとはすこし首をすくめた人を横から見る形で示されました。もっとも後漢の許慎の著した字書「説文解字」は、「人」を「天地の性、最も貴き者なり」と解説するのですが、どうしても「万物の霊長」を思わせるような尊い人の風貌を写す形とは見えてこないのです。かえって何かに服従してでもいるような、あるいは重いものをひしひしと背に感じてでもいるような、心なしか、うつむきかげんの姿勢を写しとった形にも見えてきます。