この「バーボン・ストリート・ブルース」は先頃、亡くなった高田渡の遺言のように思える。この本は一昨日、吉祥寺のトムズボックスで偶然手にしたものだ。たまにメディアに登場する高田渡はどうみても自分より一回り上だと思っていたが、奥付を見ると意外や意外、自分と同い年である。それで同時代を生きた者の時代の証言を読む気になった。ボヘミアン的人生を全うした高田渡はその生い立ちから漂泊の人生を約束されていたようである。最終章には「、、、そして酒がまったく飲めなくなったときにパタンと死ねたら最高だと思う。」の言葉が、これも人生。合掌。
フォークソングは僕らが高校生の時、流行った音楽だが、僕はあの私小説的な世界が好きになれず、距離を置いて傍観者として見ていただけだった。高校の同級生に"S"というフォークソングの上手い奴がいた。唄うのはもっぱらピート・シガーやディランやPPMのコピーなのだが、ギターにマウスハープ、それにウッドベースの伴奏者という、いちおう本格的にスタイルを決めていた。美術室に置いてあるトルソーのアグリッパ像に似た風貌の"S"はボヘミアンとして生き、野垂れ死にする人生を標榜していた。そんな"S"は僕に向かって「おまえはニヒルな奴だな」とよく言っていた。誰が何と思おうがどうでもよいが、"S"から見ればフォークの世界に白けていたように見えたのだろう。その後の"S"はフォークシンガーになることも、ボヘミアンになることも、ましてや野垂れ死にすることもなかったようである。
Posted by S.Igarashi at May 30, 2005 09:11 AM | トラックバック