新潮社の季刊誌『考える人』2006年冬号から2013年夏号まで、8年に亘って連載されたエッセー「私の暮らしかた」が一冊となり、デビュー40周年の区切りでもある昨年秋に出版された。
『私の暮らしかた』は新潮社の「考える人・編集長」だった松家仁之氏に背中を押されて始めた連載であったようだ。2006年冬号の「新連載の紹介」の最後に『…人生というものは、日々の暮らしの積み重ねでしかないということを、あらためて気づかせてくれる大貫さんならではのエッセイ…』とあるが…それは大貫妙子の音楽家としての40年の活動にも共通するものがあるようだ。
東京生まれの著者が葉山に家を建て、両親と共に暮らし、その両親を看取る、その日常の繰り返しと四季の移り変り...その暮らしの中で見たもの、感じたことがエッセーに綴られているのだが、中々どうして筆舌は鋭いものがある。2006年に書かれた「守宮といつまでも」ではプルサーマルに『なぜそこまでして、命の危険を脅かすものを造り続けるのだろう。』と言及し、人の社会を、何本もの紐が絡まりあいコブをつくっている状態に喩え、『頑なまでにかたまったコブを誰かが緩めるのは容易なことではない。自らが緩んで、爪の入る隙間をつくってくれたなら解けるきっかけになろうというものだけれど。』と結んでいる。ん〜…東京電力のTVCMでプルサーマルの旗振り役をしていた早稲田の某名誉教授に読ませたい。
内容
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田植えとおしくらまんじゅう
十八年目のただいま
守宮といつまでも
暗闇のなかの対話
ナマケモノを見に行く
歌う私、歌わない時間
地球は誰のものでもない
二十年ぶりの買い物
楽しいこと嬉しいこと
空蝉の夏
天の川
ぎんちゃん
御蔵島にて
親と歩く
猫の失踪
庭とのつながり
ともに食べる喜び
ツアーの日々
贈りもの
東北の森へ
向こう三軒両隣
お母さん、さようなら
ノラと私のひとりの家
迎えて、送る
高野山で歌う
春を待つ
荷物をおろして
あとがき
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パンとスープとネコ日和