August 23, 2013

パンとスープとネコ日和

パンとスープとネコ日和
群 ようこ ・著 (ハルキ文庫 む 2-4)
群 ようこの文章を読んだのは群 ようこが本の雑誌社・社員第1号時代に未だ季刊誌だった「本の雑誌」に定期掲載されていたエッセーだと思う。「本の雑誌」は四谷にあった文鳥堂書店に置いてあったバックナンバーで創刊四号くらいから読み始めたと思うが、季刊誌から隔月刊、月刊となる頃には何処の本屋でも置くようになり、そのうち本屋でパラパラと立ち読みで済ますようになった。「かもめ食堂」はレンタルDVDで見ただけで小説は読んでない。群ようこの小説を読むのはこれが初めてだ。
本書を読む気になったのは、何気に訪れた歌手・大貫妙子のオフィシャルサイトに主題歌を担当したドラマの放送案内を見て「かもめ食堂」や「めがね」のキャストやスタッフと共通する面子が揃っていた。放送は終わっているし、第一WOWOWを見られる環境にはない。iTunesStoreで検索すると「パンとスープとネコ日和 オリジナル・サウンドトラック」がリストアップされた。次にAmazonで検索するとハルキ文庫にあるようなので、買い物ついでにくまざわ書店に寄ってみた。角川文庫に較べるとハルキ文庫は弱小なので文庫本書棚の分類案内にもなく、探すのに一苦労したが、隅っこに二冊並んで置いてあった。
最近読んだ小説は青空文庫で堀辰雄の「風立ちぬ」である。主な登場人物が主人公と許婚・節子とその父の三人だけと云う極端な人物設定は煩わしい人間関係を排除しているように思えた。許婚・節子の母親について何も語られていないのは...やはり男の書いた観念的な恋愛小説だからであろう。「パンとスープとネコ日和」には堀辰雄が排除した煩わしい人間関係がてんこ盛りであるが、群ようこの人間観察眼によって可笑しみに変換されている。作者の人間観察眼はタモリやイッセー尾形、いや女性芸人の清水ミチコや友近に共通するものがありそうだ。此のような細かい人物描写は女性にしか書けそうにもない。話の内容は省くが、主人公・アキコを手伝うことになるしまちゃんをプロゴルファーの不動裕理に似ていると喩え、『ちゃらちゃらしておらず無口なお地蔵さんといった雰囲気が似ている。』には、しまちゃんの登場場面に不動裕理のイメージが付いて離れなくなった。読み終わってからドラマのキャスティングをWOWOW・パンとスープとネコ日和で確認すると...イメージが大きくかけ離れていた。昔、務めていた事務所のボスである高木さんに「子供が犬を飼いたい。と言ってるんだけど、どうしようか迷っている。」と聞かれたことがあった。その時、生意気にも私は『動物は寿命が短いから、必ずペットの死を看取る時が訪れます。それは子供の心の成長にとって掛け替えのない出来事になる筈です。』と...若気の至り...満載の発言をした憶えがある。ネコ日和も飼猫「たろ」の突然の死によってペットロスになるが...その後は小説でお確かめを...まぁ猫好きの人にはハンカチよりもタオルを用意したほうが賢明かも。

Posted by S.Igarashi at August 23, 2013 11:05 AM