June 10, 2011

いのちと放射能

いのちと放射能 (ちくま文庫)
柳澤 桂子 (著)
著者は般若心経の現代詩訳『生きて死ぬ智慧』でも知られた生命科学者であり世界6月号『原子力からの脱出』にも寄稿されています。
本書はチェルノブイリ事故の2年後、1988年11月に地湧社から発行された『放射能はなぜこわい--生命科学の視点から』に「文庫版への長いあとがき」を追加し、タイトルを変えて「ちくま文庫」から2007年9月に発行されたもので、今年の4月に二刷され、手にした文庫版は既に四刷となっていました。3.11以降、人々のいのちに悪影響を与える放射能への関心の高さがうかがえます。

プロローグは、米国に於いて、サリドマイド薬害を未然に防いだケルシー女史の話から始まり、彼女のように正義感強く、勇敢になれるか、著者自ら自問自答し...

....原子力問題においても、この人間の弱さがいちばん問題なのではないでしょうか。大きな組織に組込まれると、個人の意志とは関係なく、不本意な動きをさせられてしまうことがあります。
....中略....
私は放射線がどのように人体に及ぼすをよく知っていました。
放射能廃棄物の捨て場が問題になっていることも知っていました。
けれども、原子力発電のおそろしさについては私はあまりにも無知でした。
....中略....
盛り上がる国民の反原発運動に対して、国や電力会社は感情論であるという見解を振りかざしています。たしかに、自分の目で確認できないことに関して、私たちは何を信じてよいかわからなくなることがあります。
 ただひとつ、私は生命科学を研究してきたものとして、はっきりと言えることがあります。それは『放射能は生き物にとって非常におそろしいものである』ということです。そのことをひとりでも多くの方に理解していただくように努めることが「私のいま、なすべきことである」と思います。

著者も組織に身を置いた人間として、その中で自分の意見を言うことの難しさを実感しています。しかし、企業や組織や経済界の中心にいる人々が思考停止に陥らず、覚醒し自分自身で考えなければこの問題は解決しないでしょう。先ずは国民、いや世界中の人々が覚醒しなければ...人類の未来もないでしょう。

内容
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・はじめに
・私たちは星のかけらでできています。
・DNAはいのちの総司令部
・DNAは親から子へ受けつがれます。
・放射能を浴びるとどうなるのでしょう。
・弱い放射能がガンを引き起こします。
・放射能はおとなより子どもにとっておそろしい。
・お腹の中赤ちゃんと放射線
・少量の放射能でも危険です。
・チェルノブイリの事故がもたらしたもの
・人間は原子力に手を出してはいけません
・これ以上エネルギーが必要ですか
・それはこころの問題です
・ひとりひとりの自覚から
・あとがき(1988/10)
・文庫版への長いあとがき(2007/8)
・解説 永田文夫(三陸の海を放射能から守る岩手の会 世話人)
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内容の一例として『お腹の中赤ちゃんと放射線』の一部を紹介すると...

胚や胎児に対する放射線の影響は、受精後どの段階で放射線を受けるかによって大きくちがってきます。
細胞が分裂して球状のかたまりをつくっている時期に放射線を浴びると、胚は死んで流産してしまいます。
からだのいろいろな部分をつくっている時期に放射能にさらされると、奇形児が生まれます。
かたちができてしまってから放射線を浴びると、生まれてからガンになります。
....中略....
放射線はDNAに傷をつけたり、切断したりして、突然変異を引き起こします。その結果、細胞がガン化したり、奇形児が生まれます。また表面にあらわれないDNAの傷が子孫に伝えられますので、長い間に、生物の中にDNAの損傷が蓄積してゆく可能性があります。

昨年秋、私の兄が柏崎刈羽原子力発電所に見学に行った際、案内係に誰かがウランの半減期を質問した処、想定外の質問だったようで案内係は即答できず。後から『45億年...です。』と聴いた時、その場の誰もが『やっちまったぜ、パンドラの蓋を開けちまったぜ...』と思ったようですが、その半年後にFkushima3.11が起こるとまでは考えてもいなかったようです。
とにかく、こう云うことです。原発は無免許でブレーキの利かない自動車を運転している様なものです。事故が起きてから仕方ないでは済まされません。
『6.11脱原発100万人アクション』
追記 aki's STOCKTAKING:いのちと放射能

Posted by S.Igarashi at June 10, 2011 09:34 AM
コメント

shinさん、どうもです。

放射能汚染の蔭に隠れてますが、震災で倒壊した工場や化学物質貯蔵タンクによる海洋汚染もありますからね、

ところで、非電化工房では放射能対策用の逆浸透幕式浄水器(米国製)を数量限定で原価で分けてくれるとか...です。

http://www.hidenka.net/cgi-bin/mailmagazine/41.html

Posted by: iGa at July 3, 2011 09:37 AM

柳澤桂子さんの記事読んでいて思い出しました
三重大学の勝川俊雄准教授、専門は水産資源学
http://katukawa.com/?p=4549
東京電力や国の情報が分かりにくいので自発的にブログで海洋汚染を発表しています
紹介していくつもりですが、海洋汚染はまさに深刻です

Posted by: shin at July 3, 2011 05:40 AM

官僚も顔が見えないって処が放射能に似て、彼らによる被害でこの国が疲弊してます。

Posted by: iGa at June 10, 2011 06:27 PM

見えないってのがなんともねえ。
いわきの国は風評に疲れ果てています。

Posted by: Fumanchu at June 10, 2011 05:55 PM