May 22, 2011

原発事故はなぜくりかえすのか

takagiji36.jpg原発事故はなぜくりかえすのか
高木仁三郎著:(岩波新書)
3.11の後、確かどこかにある筈だと未整理の書棚に隠れていた本書を引っ張り出してきた。本書を読むきっかけはTBS News23に何度か氏が出演され、2000年10月8日に氏が亡くなられた翌日の多事争論で「市民科学者」としてその死を取上げられ、本書が出版される二週間前にTBS News23の特集「高木仁三郎という生き方」を見たからだと思う。略10年前に購入した本なので私の脳内の揮発性メモリから記憶は蒸発していたので読み直すことに...。改めて年譜を読むと氏が亡くなられた年齢は今の私の年齢と同じ...う〜む....。遺言となった「最後のメッセージ」に無念さを感じると同時に...この10年間...私は何をしていたのだろうか...。

友へ 高木仁三郎からの最後のメッセージ

皆さん、ほんとうに長いことありがとうございました。体制内のごく標準的な一科学者として一生を終っても何の不思議もない人間を、多くの方たちが暖かい手を差し伸べて鍛え直してくれました。それによって、とにかくも、「反原発の市民科学者」としての一生を貫徹することができました。

 反原発に生きることは、苦しいこともありましたが、全国・全世界に真摯に生きる人々と共にあることと、歴史の大道に沿って歩んでいることの確信からくる喜びは、小さな困難などをはるかに超えるものとして、いつも私を前に向かって進めてくれました。幸いにして私は「ライト・ライブリフッド賞」をはじめ、いくつかの賞にめぐまれることになりましたが、それらは繰り返し言って来たように、多くの志を共にする人たちと分かち合うべきものとしての受賞でした。

 残念ながら、原子力最後の日は見ることができず、私の方が先に逝かねばならななりましたが、せめて「プルトニウム最後の日」くらいは、目にしたかったです。
でも、それはもう時間の問題でしょう。すでにあらゆる事実が、私たちの主張が正しかったことを示しています。なお、楽観できないのは、この末期症状の中で、巨大な事故や不正が原子力の世界を襲う危険でしょう。JCO事故からロシア原潜事故までのこの一年間を考えるとき、原子力時代の末期症状による大事故の危険と結局は放射性廃棄物がたれ流しになっていくのではないかということに対する危惧の念は、今、先に逝ってしまう人間の心を最も悩ますものです。

 後に残る人々が、歴史を見通す透徹した知力と、大胆に現実に立ち向かう活発な行動力をもって、一刻も早く原子力の時代にピリオドをつけ、その賢明な終局に英知を結集されることを願ってやみません。私はどこかで、必ず、その皆さまの活動を見守っていることでしょう。
   いつまでも皆さんとともに  高木仁三郎

最後まで氏が抱いていた危惧は現実となってしまいました。
最終章の『技術の向かうべきところ』ではこう述べています。

...原発が本当に深刻な事故に至った場合は、人為的な判断で、外からダイナミックな装置を介入させてシステムを止めるとか、緊急冷却水を送り込んで原子炉を冷やすというようなことでなくて、本来的に備わった安全性--パッシブ・セーフィティと言われています--によって暴走を止めるようなあり方のほうが望ましいのではないかということです。...

氏は原発という自然界を制御するアクティビズムの極致の技術から...パッシブで平和的で、大きな破綻や事故を招かないで済むようなシステムを取り入れて行く方向に科学技術がシフトしていかないと、人間の未来も危ういものとなってしまうと...言っているように思えます。

『原発事故はなぜくりかえすのか』 内容
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はじめに....
 臨界事故/青い閃光/峠三吉/饒舌な報告書
1 議論なし、批判なし、思想なし
  安全神話の崩壊/安全文化/原子力文化/安全第一/自己検証のなさ/原子力産業の状況/さまざまな用途の研究/相互批判なし/議論なし、思想なし/原子力導入の歴史/原子力村の形成/奇妙なブーム/ある体験

2 押し付けられた運命共同体
  国家まかせ/大事故の評価/トップダウン型の開発/サッカーにたとえると/「三ない主義」/「我が国」という発想/マイ・カントリー

3 放射能を知らない原子力屋さん
  バケツにウランの衝撃/物理屋さんと化学屋さん/放射化学屋の感覚/物理屋さんの感覚/自分の手で扱う/放射能は計算したより漏れやすい/事故調査委員会も化学抜き

4 個人の中に見る「公」のなさ
  パブリックな「私」/普遍性と没主体性/公益性と普遍性/仏師の公共性/技術の基本/原子力は特殊?/科学技術庁のいう公益性

5 自己検証のなさ
  自己検証のない原子力産業/自己に対する甘さ/自己検証型と防衛型/委員会への誘われ方/結論を内包した委員会/アカンタビリティー/寄せ集め技術の危険性

6 隠蔽から改ざんへ
  隠蔽の時代/質的転換/技術にあってはならない改ざん/技術者なし

7 技術者の変貌
  物の確かな感触/ヴァーチャルな世界/論理的なバリアの欠如/新しい時代の技術者倫理綱領

8 技術の向かうべきところ
  トーンを変えた政府/JOCの事故の意味/技術の極致/現代技術の非武装化
あとがきにかえて
  友へ 高木仁三郎からの最後のメッセージ/高木さんを送る
  高木仁三郎・年譜
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Posted by S.Igarashi at May 22, 2011 09:28 AM
コメント

komachiさん、どうもです。

目次を読むだけでも、この十年、何も変わってないことが判りますね。いや、省庁等の統廃合で十年前よりも悪くなっているかもです。

今日は小出裕章、後藤政志、石橋克彦、孫正義、四名が参考人として招致された参議院行政監視委員会の中継をUstreamで見てましたが、これもネットの力があったから、可能になったことでしょうね。
http://www.ustream.tv/recorded/14906087

Posted by: iGa at May 23, 2011 08:42 PM

iGaさん、良い本を紹介ありがとう。3.11以降、私も木さんの本を読み返しています。この本はまだ読んでいません。読みます。

Posted by: komachi at May 23, 2011 06:35 PM