楽しくわかる!住宅工事現場写真帖
古川 泰司著:エクスナレッジ・ムック
昨年末、坂田明氏から伺った話で、海外公演旅行の際に余興で日本の伝統的歌謡を独唱すると場が盛り上がり、大体の国では受けるそうだが、中にはシラーとして全く受けず、逆に怪訝な顔をされる場合もあるそうである。何故か?といえば、その国では歌は一人で唄うものでなく皆で唄うものなのだそうだ。その話を聞いて『じゃぁソバヤを唄えば受けたかも知れませんね。』と言うと、坂田氏は『そうだね。』とソバヤのサワリを唄ってくれた。坂田氏の分析によれば職能が未分化な地域で共通するリアクションと云うことである。
近代化によって職能の分化がもたらされ、現代はその職能も更に細分化され、自分が従事している職能でさえも、その産業の全体像を捉えることは、もやは困難な時代となっている。住宅建築もその例外ではなく嘗て農村地域では村を上げて農家の新築や改築、そして茅葺き屋根のの葺き替えをしていたが、そうした農家でさえも今日では商品化住宅によって建替えられているのが現状だ。
話は大幅に逸れてしまったので本書に戻ろう。古川氏が再三Twitterで呟いていたメインタイトルの「住宅工事現場写真帖」だけでは、その内容が何のことやら想像できず、伝わり難いが、本書を手に取って見るとタイトルの脇に添えられた"Half-Build Handbook"の文字に合点し、そこに著者の思いが込められているように思えた。恐らくはタイトル決定まで著者と編集者、それに営業企画の間で喧々諤々とした話し合いが行われ、それぞれの意見を取り入れた結果、背表紙に副題、表紙カバーにキャプションやコンテンツを入れたと想像するのだが...さて真相は...如何に。
そんな深読みをするまでもなく、本書で最も多くの頁を割いているのが"Half-Build Handbook"に相応しい、床、壁、家具による、いわゆる内装工事にも分類できる工事区分である。これは新築でなくても、中古マンションや、中古住宅を自分の手でリフォームしたいという潜在的なニーズに応えたものであろう。いきなり自分の手で建築工事の何から何まで...セルフビルドでは余りにも敷居が高すぎて、尻込みしてしまうが...床の張り替え...とか壁の塗り替えの...ハーフビルドなら自分でもやってみたいと思う方には...最適な本である。
住宅は世界の至る所に遍在しているものである。見本となるものは幾らでもある。我流だろうが独学であろうが、自分で作ろうと思い立ち...研究心と根気さえあれば...誰でも可能性はある。必要なのは子供の頃に...秘密基地を作った...あの時の冒険心だけである。
aki's STOCKTAKING:住宅工事現場写真帖