December 02, 2008

明治百話

昨夜『明治百話』の公開通し稽古を見てきた。
と云うことでもんしぇん応援団による時間差多発エントリーである。チラシのコピーには『ご覧、あそこにいるのは、百二十年前のあなたとあたし』とある。120年前と云うと1888年、明治21年である。そんな昔のこと、子供の頃だったらとても想像できなかった。しかし、人生60年近く生きていると、何となく解る。少なくとも自分の生きた年月は解る。それを時間のベクトルを逆方向に生きた年月だけ進めば、百二十年の時間軸も想像できるように思える。すると『百二十年前のあなたとあたし』も身近な存在に見えてくるから不思議だ。人間はそれ程変わっていないのに、私たちの町の有り様は悲惨なほど姿を変えてしまった。町の名前も消された。芝居の中に出てくる木挽町、猿若町なんて聴いてピンとくる人は芝居好きか古地図男か人生のベテランだろう。経済性や合理性や開発の名目で市井の人々の歴史や記憶が殺されてゆき、行き場を失った従順な人達は地面から引っ剥がされて超高層マンションへと追いやられてゆく。街の姿を変えても、人間の本質は今も昔も大して変わりない、いつの時代でも権力の頂点に立つものは人を支配したがるし、悪い奴、狡い奴もいれば、お人好しもいる。明治がちょっぴり魅力的に見えるのは、勤め人が少数で、市井の人々の多くは企業に隷属することもなく、小商いや職人等々で生業を立て、自立していたからだろう。
芝居は「明治百話」の中から幾つかのエピソードを取り出し、女役者・坂東侠香の話をコアにして、首切り・山田浅右衛門の話、新橋芸妓・秀千代の話を絡めてゆく。そこに新聞錦絵もどきへ有る事無い事を書き立てるやくざな記者やら、大店の若旦那、はたまた幼くして亡くなった娘の幽霊まで絡んでゆく。芝居の時間軸をコントロールし、舞台転換を演出するのが囃子方であるパーカッションの関根真理さん、場面転換によってはビリンバウまで駆使している。二幕目から囃子方に、鉄火肌の新橋芸者役で三味線を披露した かりんさんも加わり、二十五弦箏と喉を披露する。玉井夕海さん演じる女役者・坂東侠香の着物姿も見どころ。色々な才能を持った人達が集結して芝居創りに挑んでいる。どうです、面白そうでしょう。
シアターイワト(新宿区岩戸町)
2008年・12月3日(水) → 7日(日)
3日(水)/4日(木)/5日(金)──19時開演/6日(土)/7日(日)──15時開演
開場は30分前 100席 自由席
入場料3800円(学生2000円)
Kai-Wai 散策:『明治百話』稽古風景@iwato
MyPlace:明治百話
aki's STOCKTAKING:明治百話

篠田鉱造『明治百話』抄
神楽坂上岩戸町シアターイワトの制作毎日日記

Posted by S.Igarashi at December 2, 2008 01:10 AM
コメント

fuRuさん、どうもです。

小劇場ならではの見立てと空間演出の面白さもあります。
楽しんで下さい。

Posted by: iGa at December 4, 2008 02:48 PM

同時多発エントリーを読んでいて
ザワザワとしたものを感じてしまい
明日のチケットを予約してしまいました。(*^^*)

Posted by: fuRu at December 4, 2008 02:25 PM

masa さん、どうもです。
先日はもしかして居るかと思いましたが、入れ違いだったようですね。

実はそんなに長居するつもりもなかったのですが、稽古を見始めたら芝居に引き込まれ、これは最後まで見届けねばならないと思った次第です。

小学校に上がる前、母に連れられて明治座や新橋演舞場の新派の舞台を見ていたので、割合とすんなりとこの時代の芝居に入れますね。(その頃は直ぐに飽きて、帰ろう、帰ろうと母を困らせましたが...)

Posted by: iGa at December 3, 2008 01:36 PM

この芝居を通しでご覧になっているのは、直接的な関係者をのぞき、おそらくiGaさんおひとり…ですね。ということは、このように書けるのも、やはりiGaさんおひとり…というエントリーですね〜。説得力あります。ここでも夕海さんになりかわり、御礼です!

Posted by: masa at December 3, 2008 11:44 AM