朝刊に「23区すべてで目撃情報 NPOと探す・となりのタヌキ調査中」の特集記事があった。NPO法人・都市動物研究会の理事である宮本氏が主宰する東京タヌキ探検隊との同行取材である。現在、都内23区に推計1000匹のタヌキが棲息しているらしい。
そういえば昨年、初めてタヌキを見た。高尾駅近くの甲州街道を横断しようとしていたタヌキである。当然、都内よりも野生動物の個体数は多い筈であろうが、野生動物を見ることは稀である。
子供の時に見た野生動物(ほ乳類)は野兎と栗鼠をそれぞれ一度だけ山の中で見た限りである。家の裏山の雑木林で野兎の糞を見つけたことは何度もあるし、昔、飼い猫が二度ばかり野兎を捕まえてきたことがある。この猫、足立区は梅島生まれの下町育ちなのだが、生まれながらの名ハンターで、まだ足立に住んでいた頃、隣の家で飼っていた鳩が、家の庭に水を飲みにくるのを狙っては何度も捕殺していた。或る時、隣人が怒鳴り込んできたが、母が「あーそうですか、畜生のやることですから。だったら、洗濯物に糞をかけたり、人の家の水を勝手に飲みに来ないように鳩に鎖でも繋いでおいて下さい、もしも家の猫がお宅に入り込んで悪さをしたら、捕まえて煮るなり焼くなり、どうぞ好きにして下さい。」と追い返してしまった。隣人に焼かれることもなく八王子の山里に越してきたこの猫、野生の血が目覚め、雌猫のくせしてハンティングに出ると、家に帰らないことも度々、獲物は野兎の他、小綬鶏、モグラ等々、その数知れず。その猫、晩年は山中で虎鋏に遭い、前足を失い、三本足の猫になってしまったが、それでもハンターの血は衰えることはなかった。流石に、自分よりも身体の大きいタヌキを捕まえてくることはなく、野生のタヌキを見ることもなかった。それも当然で、子供の起きている時間とタヌキの行動時間もテリトリーも異なり、山里だからといって普段の生活でタヌキと遭遇することはないのである。