東京オペラシティアートギャラリーの「武満徹 ─ Visions in Time 展」を見てきた。
平日の午後とあってか静謐な展示会場は「実験工房時代」の滝口修造に捧げられたともいえるピアノ曲「遮られない休息」の精緻な自筆スコアから始まり、「御代田のアトリエ」「美術家との交流」「映画・テレビ・ラジオ」「著述」「プロデューサー」のコーナーと続き、アルバムや著書に用いられた原画が展示され、最後はデビット・シルビアンとラッセル・ミルズによるビデオ・インスタレーション「トオルのいない庭で」によってデクレッシェンドされる。
いつの事だったか憶えていないが、1970年代の前半だったと思う。テレビで武満徹と黒川紀章ともう一人誰か記憶にないが三人で六義園を散策しながら何かを話す企画番組を見た。その中で黒川の話しを受けて、武満は「どこからともなく表れて、いつの間にか消えている、風のような音楽を作りたい。」と、そのような意味の事を言っていた。30年以上前の記憶なので精確ではないが、その部分だけ憶えている。
そんな事を展覧会カタログの次の一節を読んで思いだした。
匿名の部分Posted by S.Igarashi at May 11, 2006 10:12 AM私の音楽は、たんに娯みや慰めのためのものではない。
私の音楽は、いま生きている時代の、知や感情と結びついてはいるが、
だからといっって同時代性に凭れかかっているわけではない。私の音楽は、つねに、個人的(パーソナル)な感情から生まれるものであり
「日本主義」というようなものとは関わりをもつものではない。私の音楽は、「自然」から多くを学んでいる。自然が謙虚に、
しかし無類の精確さでさししめすこの宇宙の仕組みにたいして、
私の音楽は、その不可知の秩序への限りない讃歌なのだ。私は、音楽を通して、「世界」の匿名の部分(パーツ)たりたい。
まぁ、どうなんでしょうね。
好意的に解釈すれば、直前になって貸し出し許可が得られたのでカタログに間に合わなかった、ということでしょうが、展覧会にきてカタログを求めた人には訂正資料を渡すのがやはり筋でしょうね。逆に云えば、武満研究はこれからなのでしょう。
因みに、作品は『「カトレーンII」 のために. 中西夏之. 1979 年. 油彩・紙. 土方巽記念資料館蔵. (土方巽コレクション)』です。暗黒舞踏の (土方巽コレクション)てのが良いですね。
LPアルバムは「カトレーンII タッシ・プレイズ武満」これは昭和54年度文化庁芸術祭参加作品になってますね。
そうでしたか。
やっぱり、行かないと、というか絶対行くつもりなんですが
そんな半端な本で体裁だけはやたらよくて
なんといってもハードカバーですから
中身がそれでは、展覧会のカタログとしては困ったものなんですね。
fuRu さん、
展覧会カタログとして販売されている書籍は展覧会図録として見ると、中途半端な内容で出品作品を全て網羅していませんので、記録的価値が半減しています。まぁ、編集が終わってから出品作品が増えたのでしょうが、そのケアがなされていないのが問題です。特に残念なのはRCAから出ているアンサンブル・タシのカトレーンIIのアルバムに使われた原画が出品されているのですが、これが原画はおろかレコードも紹介されていないというお粗末、レコードジャケットは原画の一部分をアップしたもので、原画全体を見たのは今回が初めてなので、図録に期待したけれど、カタログにはカゲもカタチもなかった。
AKi さん、どうも。
そうですね、世界を形造っているのは匿名の部分ですからね。
粋というのはそういうことでしょうね。
行かれたんですね。
僕は28日のコンサートの前に寄ってみようと思っています。
本はすでに買いました。
いいですね。
ちょっと違うけど、音楽を建築に言い換えて.......たくなりますね。
「私は、建築を通して、「世界」の匿名の部分(パーツ)たりたい。」
いいなぁ。
Posted by: AKi at May 11, 2006 11:27 AM