August 15, 2005

子どもたちの8月15日

子どもたちの8月15日岩波新書編集部編
岩波新書 ISBN4-00-430956-5 定価(700円+税)
国民学校世代の33名、それぞれの戦争体験と1945年8月15日が語られている。
中村敦夫は語る『昔の記憶というものは、あまりあてにならない。他人から聞いた話と混線したり、話を面白くするために粉飾した部分が、いつの間にか既成事実になったりする。』彼のそうしたスタンスは五歳で終戦を迎えた氏にとって当然と思える。何れにせよ公に向けて書かれたものよりも当事者から直に聞いた話の方が多くの真実が含まれているような気がする。
私が直に聞いた国民学校世代の8月15日は次のようなものである。彼は昭和八年生まれ、12歳で竹町(現在の台東区台東)で終戦を迎えた。生家は空襲による焼失を免れ、ただ爆風で窓ガラスが破れ飛んだだけという。12歳の悪ガキにとって8月15日から数日間の政治的空白状態は忘れることの出来ない体験だったそうだ。虚脱状態に陥ってる大人達を尻目に焼け野原となった無政府状態の帝都東京を浅草から上野一帯を冒険して回ったという、どんな悪さをしても叱る大人もなく、生まれて初めての自由と解放感を謳歌したというが、その自由は一週間とは続かなかったそうである。

Posted by S.Igarashi at August 15, 2005 10:39 AM