June 21, 2005

NOW HE SINGS,NOW HE SOBS

NOW HE SINGS,NOW HE SOBS/CHICK COREA
1968年3月録音のピアノトリオによるチック・コリアの出世作である。同じ1968年にはビル・エバンスがモントゥルー・ジャズ・フェスティバルのライブ盤を残しており、何れも当時話題になったピアノトリオのアルバムである。ジャズの定番となっていた4ビートのハードバップと一線を画しながらも、グルーヴでドライブ感溢れるチック・コリア・トリオの演奏スタイルは耳に新鮮に聴こえたものである。ドラムにベテランのロイ・へインズ、ベースに新鋭のミロスラフ・ヴィトウスを加えたこのトリオがジャズピアニストとしてのチック・コリアの原点なのだろう、その後1981年にトリオを再結成し1984年にECMにレコーディングを残している。そこにはCIRCLEで見られた緊張感は微塵も感じられないが、、。

TRIO MUSIC, LIVE IN EUROPE1984年9月録音
"NOW HE SINGS,NOW HE SOBS"から実に16年を経てのチック・コリア・トリオによるアルバムである。その間、チックは"CIRCLE"や"return to forever"、はたまたエレクトリックバンドやクラシックへの傾倒と良く言えば多才な活動、悪く言えばあれもこれもと焦点の定まらない活動期間を過ごし、ミロスラフ・ヴィトウスはあのウェザーリポートの第1期のメンバーとして世間に注目されていた。ロイ・へインズはコルトレーン・カルテットのサイドメンとしても活躍していたベテランである。
このアルバムもチックの多才?ぶりが反映してか焦点は定まらず、その分だけ印象は散漫となる。スタンダードナンバーではキース・ジャレットを意識した演奏内容となり、スパニッシュモードでは通俗性がチラホラ、揚げ句はフリージャズだってできるとの演奏は蛇足に感じられる。


CHICK COREA/RENDEZVOUS IN NEW YORK
2001年12月のN.Y.ブルーノートでのスペシャルセッションのライブ盤である。いわゆる同窓会アルバムの類いである。この一夜だけ"MATRIX"の演奏にロイ・へインズ、ミロスラフ・ヴィトウスとのトリオが再結成された。しかし"CIRCLE"は封印されたまま、再結成されることはなかった。チックにとって"CIRCLE"は忘れたい過去なのだろうか。
1970年前後、雑誌"Jazz"でプーさんこと菊池雅章がチック・コリアの演奏スタイルをどう思うかの質問に答えて言った。「ん〜、どこかタンゴのオブリガートを聴いているようで、、」言い得て妙である。プーさんはチック・コリアの通俗性を見抜いていたのである。

Posted by S.Igarashi at June 21, 2005 10:48 AM | トラックバック
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