June 25, 2005

モービー・ディック航海記

モービー・ディック航海記
たむらしげる・著 
ソニー・マガジンズ発行 ISBN4-7897-2544-8
たむらしげるの新刊・SFファンタジーである。
彼は以前より"誰のために絵本を書くのか"の問いに対して"少年時代の自分のために書いている"と答えている。当然この"モービー・ディック航海記"も少年だった頃のたむら君に向けて書かれたものであることは間違いない。彼の分身でもある主人公Qや、96歳の叔父は空想世界の中で時間や空間を超えてパラレルワールドへと冒険する。その時間と空間が入れ子になった小宇宙は彼が少年の頃に見た世界なのだろう。

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そんな、たむらしげるの世界が絵本の作家たち (2) 別冊太陽に22頁に亘って紹介されている。そして"モービー・ディック航海記"のクジラ型潜水艇のモチーフは既に30年前くらいにはそのイメージが出来上がっていた。(写真右上はシルクスクリーンによるモービー・ディック、1970年代の後半くらいの作品。)
彼は その別冊太陽に自らその半生を語っている、彼の才能の兆しが垣間見えた高校生の頃、僕らは三年間を同じクラスで過ごした。なんとなくいつも斜め後ろくらいに彼の席があり、授業中は教師に見つからないよう教科書の端にパラパラ漫画を描いて彼は過ごしていた。彼の漫画に対する非凡なところはその眼差しが海外に向いていたことである。八王子は丘陵地の峠に住んでいた少年が今は無き銀座イエナ書店に通い原書を求め、雑誌ニューヨーカーを月極購読していたのである。彼は確実に同世代の少年よりもワンラップオーバーしていた。

Posted by S.Igarashi at June 25, 2005 04:54 PM
コメント

そういえば銀座イエナ書店(近藤書店)はディオール銀座店になっていた。出版も本屋も厳しい時代ですね。

Posted by: iGa at June 28, 2005 09:34 AM

わあ、高校時代そんなこともやっていたね。当時のニューヨーカー誌の中に別世界が見えた。その結果かどうか分からないけど、勉強はできなかったよ。まあ無理もない。遊んでいたのだから。でも、今の仕事が続いているのはそんな遊びがあるからだろうね。
高校時代の五十嵐君も独特の雰囲気を持っていたよ。

Posted by: たむらしげる at June 27, 2005 08:54 PM