テレビの嘘を見破る
今野勉著 新潮新書
ISBN4-10-610088-6 定価735円(税込み)
いわゆる製作者サイドのメディアリテラシー系本である。もしも10年前に出版されていたならば意義があっただろうが、1993年のNHKムスタン事件を一としたドキュメンタリー番組の演出にフォーカスした内容は遅きに期した感がある。今更、「テレビの嘘を見破る」なんてこと言われても鼻白むだけである。「おいおい、それはテレビが真実を伝えるものという文脈で成り立つ言葉でしょうが、誰もそんなこと思っていないよ。」と突っ込みたくなる。やらせ擁護派の田原総一朗は演出なくしてテレビは成り立たないと言い切っているし、多くの視聴者はテレビメディアの虚構性をとっくの昔に見抜いている。使われなかった言葉や映像、フレームの外側の世界、その対価は何か。問題は虚構性の中に隠された真実を視聴者が如何に見抜くかであろう。