June 14, 2004

乱用される土地収用・病める米国

6月11日深夜のCBSドキュメントを見た。メインテーマはカリスマ主婦のマーサ・スチュワートを巡るインサイダー疑惑だったが、二つ目のテーマに病める米国の側面、頽廃する資本主義国家を見る思いがした。
オハイオ州クリーブランド郊外のレイクウッド市の閑静な住宅街を巻き込んだ再開発計画の騒動は行政側の市が私有地を強制収用して、その土地をデベロッパーに売却、デベロッパーはその土地に高級コンドミニアムとショッピングセンターを建設するという。つまりは行政がヤクザまがいな地上げ屋の代行をするという、とんでもない計画である。市側の言い分は高級コンドミニアムとショッピングセンターが建設されることにより市の税収が増えて財政が潤う、従ってこの計画は公共の利益になると云うものである。

住宅地を強制収用するにはその土地が荒廃地区に指定されていることが条件となるが、その条件を指定するのは行政側である。レイクウッド市では次に定める基準を満たしていない住宅は荒廃地区の指定を受けるように定められた。ベットルームが3以上、バスルームが2以上、住宅内に2台のガレージ、空調システム、敷地は446平米、以上の条件を満たしていなければ住宅は荒廃していることになる。因みにこの基準ではレイクウッド市の住宅の90%以上は荒廃住宅の適用を受けることになる。この基準では再開発計画を推し進めようとしている市長が住む家もバスルームが一つだけ、ガレージは別棟、空調設備は全室完備していないから荒廃住宅になるという矛盾。
米国ではこの五年間で、行政が個人の財産を強制収用して大企業や繁盛している店舗に売り渡す例が一万件を超えると云う。
アリゾナ州のメイサ市では角地にある自動車修理工場の土地を欲した近隣の金物店が直接その自動車修理工場の所有者に交渉することをしないで、市側に働きかけ、行政の力で収用権を行使することを要求。金物店の経営者は再開発が公共の利益になることを主張する。
N.Y.市ではタイムズスクエアの数ブロック先の地区を荒廃地区に指定、強制収用した土地をニューヨーク・タイムズと大手デベロッパーに売却し、そこにニューヨーク・タイムズの本社ビルを建設するという計画。CBSの取材チームに対してニューヨーク・タイムズ側は取材を拒否している。

この番組が米国で放送されたのが2003年9月、その後、レイクウッド市の件は住民投票の結果、計画は白紙撤回、市長はリコールされ失職した。アリゾナ州のメイサ市の件は自動車修理工場の勝利。しかしN.Y.市で起こされた裁判では住民側が敗訴している。

1970年代後半から80年代の初めくらいまで我が国でも放送された米国のテレビ番組「刑事コジャック」はN.Y.市を舞台にしたドラマであったが、その時初めて耳にした言葉がマフィアによる「地上げ屋」であった。それから数年経ってバブル期の頃は「地上げ屋」の言葉を耳にしない日はなかった。
地上げの時代・昭和も遠くなかりけり
米国で起きた社会現象はその数年後、日本でも起こると言われる。そこで、気になるのが有事関連法案である。そこにある私有地の強制収用権が悪用されることがないであろうか。多国籍軍への参加は現行法でも問題なしとする内閣法制局である。憲法違反が明らかでも、平気で解釈をねじ曲げる為政者がいる限り不安はなくならない。

Posted by S.Igarashi at June 14, 2004 09:00 AM | トラックバック
コメント

ishikawaさん、コメント有り難うございます。
日本の場合は相続税という名に隠蔽された土地収用もありますね。

Posted by: S.Igarashi at June 15, 2004 09:20 AM

はじめてコメント差し上げます。
いつも楽しみに拝見しております。
アメリカでそんなことが起きているとは知りませんでした。地方分権が進んでいるアメリカ特有の現象ではないのでしょうか?日本でも地方分権が進み地域間の税収競争が始まればおこりうるかもしれませんね。都市計画とは常に政治の利権と直結しているので恐ろしいですね。東京では商業地の地価が上昇に反転したので、おかしな法律ができないか要注意といったところでしょうか?

Posted by: ishikawa at June 14, 2004 06:44 PM