March 28, 2004

華氏451

華氏451は高校生の時に新宿文化(ATG、アートシアターギルド)で見た初めての映画だ。レイ・ブラッドベリ原作、フランソワ・トリュフォー監督のこの映画は近未来の言論統制下にある社会を描いている。同じようにファシズムをテーマとした「1984」と比較すると「華氏451」の近未来社会は一見して秩序があり、都市も美しく人々の生活も豊かに見える。それはソフト・ファシズムと言って良いだろう。体制に逆らわず、何も考えず、誇りも持たず、家畜として生きて行けるなら楽な世界に見える。華氏451は紙が燃える時の温度である。焚書がテーマのこの映画の主人公は消防士であるが、消火が任務でなく、反体制のアジトをガサ入れして、書物を燃やすのが任務である。活字は御法度、新聞は漫画だけ、テレビだけが一方的な情報源の社会である。別名・悪徳政治家及び官僚保護法と呼ぶのが相応しいような個人情報保護法のごり押し採決といい、週刊文春・出版禁止措置といい、「1984」から20年を経た「2004」は限りなく「華氏451」の世界に近づいているようにも思える。

Posted by S.Igarashi at March 28, 2004 11:53 AM | トラックバック
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