A valentine out of season / John Cage
「季節はずれのヴァレンタイン」と題された高橋アキのLP(写真右)は1977年のリリースだ。タイトルの【A valentine out of season(季節はずれのヴァレンタイン)】はジョン・ケージの1944年の作品である。プリペアド・ピアノの為に書かれた、この小品は戦時中の貧しかった時代、ケージの妻・ゼニアに贈られたものだ。「戦時中は大きな音響ばかりが世界をおおった。だから僕は小さなひびきで作曲したのだ。」プリペアド・ピアノはピアノの弦13本にゴム、フェルト、ボルト、1ペニー・コイン等を挿むことによって、独特の響きのある豊かな音色を奏でる楽器に生まれ変る。
【A valentine out of season】は亜細亜の寺院の鐘の音を想わせ、その響きは静かに力強く心の琴線に訴えかけてくる。70年代後半の僕の愛聴盤の一つだった。
LPには他にクセナキス、武満徹、サティ、ドビュッシーの曲が収められている。残念ながら、このアルバムは現在廃盤となっているようだ。Amazon.comで調べたところ、現在入手できる【A valentine out of season】が収録されているCDアルバムはJeanne kirsteinの【John Cage・Music for Keyboard】の2枚組アルバム(写真左)だけのようである。このLPの輸入盤も持っているが、この頃(70年代)の米国盤は粗悪で本当に音質も悪い。好みもあるが、LPの演奏を聴き比べた限りでは高橋アキの方に軍配が上がるのだが、それがLPの盤質のせいなのか、再確認するにはCDを買って検証しなくてはいけないのだろう。