December 30, 2003

家庭画報2月号

家庭画報2月号の「麗しのヴェネト 北イタリア世界遺産の館を巡る」は現地取材による美しい写真満載の特集であるが、困ったことにテキストに間違いや曖昧な表現が目に付く。中でもヴィチェンツァの紹介には「新古典主義の巨匠パッラーディオが築いた世界遺産の街、ヴィチェンツァ」とサブタイトルがあり、その本文を一部引用すると、、

このバシリカの設計中にローマを旅した建築家が永遠の都で見た古典主義の威風堂々たる建築に大いに影響を受け、独自の新古典主義に発展させたであろうことは想像に難くありません。
引用個所には曖昧な表現と間違いがある。先ずは古典主義をどのように定義しているのか定かでない。建築四書にあるように彼が影響を受け、実測したのは古代ローマの遺構や建築である、それは古典と呼ぶべきでものあって、決して古典主義の建物ではない。仮に先達による古典主義のルネッサンス建築を見たとしても、圧倒的な古代ローマの遺構や建築に比べたら影響はいかほどのものであろうか。また、新古典主義はロココの後の時代を示すものであって18世紀半ばから19世紀の半ばに現われた古典主義芸術を云うものである。従って16世紀の建築家であるパッラーディオを「新古典主義の巨匠」としたら間違いなく美術・建築史の成績は落第点となる。100歩譲って18世紀や19世紀のトーマス・ジェファーソンをはじめとする建築家達によってパッラーディオの建築が見直され、多くのパッラーディアンニズム建築を生んだと云う事実があったとしてもパッラーディオを「新古典主義の巨匠」とは言いはしないのである。
一般の人、それも主婦を対象にした雑誌だからと云って、ここまで美術史や建築史をないがしろにして、好き勝手な事を言って良いものでもない。もう少し美術・建築史の基本を押さえてパッラーディオを語ってもらいたい。
因に美術史家ワイリー・サイファーによる「ルネッサンス様式の四段階」では1400年から1700年に於ける芸術様式をルネッサンス、マニエリズム、バロック、後期バロックと分類している。パッラーディオの生きた時代は後期ルネッサンスからマニエリズムの時代である。また、ルネッサンスを古典主義、マニエリズムを反古典主義、バロックは再び古典主義とする考えかたもある。であるから、もしも「・・独自の反古典主義に発展させたであろうことは、、、」と書かれていたら、私も決して文句を言ったりはしないのである。

Posted by S.Igarashi at December 30, 2003 11:10 PM | トラックバック
コメント

1月15日付けで家庭画報のサイトが更新されていた。
http://www.kateigaho.com/html/sp03/pickup03/0402_pickup_3_02.html
バシリカのキャプションには「代表作バジリカのあるシニョーリ広場は市民の待ち合わせのメッカ。」と書かれている。
おいおい、それはないだろう、とツッコミを入れたくなる。
これって「代表作バジリカのあるシニョーリ広場は市民の待ち合わせのイスラムの聖地。」と云うことと同じ。カソリックの市民広場にその表現はないでしょう。幾ら比喩的表現としても宗教的コンテクストがあるものは避けるべきだろうね。
家庭画報に問題点を指摘したけれども、リアクションはなし、シカトされている。

Posted by: S.Igarashi at January 25, 2004 11:44 AM