September 10, 2016

老いの楽しみ

老いの楽しみ (ちくま文庫)
左のハードカバーの1刷りが1993年9月8日、手元にあるのは32刷りで1996年12月25日、発行は岩波書店である。20年前の8月終戦の日の翌日に沢村貞子が87歳で亡くなってからの刷りである。恐らくメディアで紹介されたのであろう母が読みたいから買ってきてと言われて買ってきた本だ。なので、さっと目を通しただけで今までしっかりと読んでいなかった。読む切っ掛けは沢村貞子の甥であるT.M.がこのところネトウヨ的暴言が止まらないので、確か叔母さんはそうじゃなかった筈だと、書棚の奥に隠れていた本書を取り出してきたのである。
本書は(I)(II)に分かれ前編の(I)は女優業を引退し東京の家をたたみ、湘南に越してきてからの日々の暮らしを描いた書下ろし、後編の(II)は新聞・雑誌に寄稿したもので、76歳から84歳の間に書かれたものだ。なかでも、後編(II)の「私の昭和」と「海外派遣だけはやめて!」には政治運動に向いてないと自嘲する明治女の反戦に対する立ち位置が明解に書かれている。治安維持法によって表現活動が規制される中、二度も特高に逮捕された貞子さんの顛末が書かれた「私の昭和」を読むと、出所した自分に『お前のしたことは決して悪いことじゃないよ。』の母の一言にはげまされ...もういちど生きてみる気になったとあるが、其処に沢村貞子のお母さんの心意気を感じる。そんな戦争体験者の貞子さんが語る『海外派遣だけはやめて!』は今日の私たちに託された遺言でもある。...なんでもない日々の暮らし、それが一番大切なものであることを教えてくれる一冊だ。

目次
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I
執着・みれん
年寄りはブラブラ
普通の暮らし
老いを思い知る
白髪いとし

話し相手について
耳も老いる
花のある暮らし

II
私の昭和
海外派遣だけはやめて!
わたしの乱読時代
父のうしろ姿
食べもの雑記
話し上手・きき上手
友だち夫婦
恥について
ご挨拶
幸せって?
男の化粧
女性のたのもしさ
年始めの会話
御楽のあまり風
高価な古物
無欲・どん欲
美しく老いるなんてとんでもない

<対談>河合隼雄/沢村貞子
老いる幸福

あとがき
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読み終えてみて、20年前にはピンとこなかった話も…なるほどと思う今日この頃である。

Posted by S.Igarashi at September 10, 2016 11:47 AM
コメント

困ったものですが、何なんでしょうね。差別主義者の酔いしれたような表情はホント恐ろしく思います。

Posted by: iGa at September 12, 2016 12:12 PM

津川に、お前はこれをどう思うんだと訊いてみたいですね。
山本薩夫の甥である山本学も、安倍の応援団の先頭に立っています。成蹊の同窓というだけでなく、あれがいいと思っているんでしょうからこまったものです。

Posted by: 玉井一匡 at September 12, 2016 09:44 AM
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