June 06, 2013

用・強・美

漂うモダニズム」(槇 文彦・著)の第5章「作家と作品」の361頁を読んでいると次の一説に目が止まった。

かつて建築家ヴィトルヴィウスが述べた「用強美」の中で美はラテン語で「venustas」 といわれていた。しかし最近ある学者は実は彼がいっているのは〈美〉ではなく、より普遍的な価値すなわち〈悦び〉だと提言しそれが現在では通説となっている。

槇氏は同じことを工学院大学・建築学部開設記念レクチャーシリーズでも語っている。
何故〈悦び〉が〈美〉に置き換えられたのだろうか、興味深い処である。一つはカソリックによる支配を強固にする為の施策でもあろう。ルネッサンスとされているムーブメントも一神教のカソリックからすれば異教であった筈の多神教時代の古代ギリシャ・古代ローマの思想を都合よく解釈し理論武装していったものだが、例えば『美は神の属性』とするプラトンの思想は法王庁にとって、最強の武器であり、〈悦び〉を〈美〉に置き換えれば、建築は絶対的存在と成り得ただろう。

Posted by S.Igarashi at June 6, 2013 09:27 AM
コメント

現代人は近代希臘が分からんし、昭和生まれは翁倩玉の愛的迷戀(Love Is Calling Me)のエーゲ海の青い海と青い空のイメージだけでしょう。

Posted by: iGa at June 6, 2013 03:33 PM

東海散士=柴四郎の「東洋之佳人」にも「愛蘭土の姫君」と「希臘の姫君」が出てきますが、現代人は近代希臘を會津になぞらえることもせんのでしょう。

Posted by: Fumanchu at June 6, 2013 02:55 PM

ボザールでは実習で極彩色のギリシャ神殿の装飾を描いていたみたいですね。

ギリシャの近現代史はテオ・アンゲロプロス監督のギリシャ映画「旅芸人の記録」に良く描かれていますね。
建築家で現代音楽家のクセナキスはドイツに支配されていた第二次世界大戦中パルチザンでしたが、ドイツが敗退し、代わって英国がギリシャを支配統治することになり、その英国軍の軍法会議(欠席裁判)によって死刑を宣告され、地下に潜りフランスへ亡命して、コルビジェに匿われる訳で...そういえばコルビジェは英国で仕事してないかも...英仏愛憎劇が見え隠れしするような。

Posted by: iGa at June 6, 2013 02:21 PM

先日NHKでやっていた「ギリシャの神殿は「白」ではなく、エジプトへ出稼ぎに行っていた傭兵が持ち帰った、エジプト式の極彩色だった。」というのと平仄があっていますね。近代ギリシャもトルコから領土を切り取る、というキリスト教徒の陰謀であって、それを「崇高な白」にしてしまうのに、大英博物館が手を貸していたということです。

Posted by: Fumanchu at June 6, 2013 12:03 PM