「主権者」は誰か...原発事故から考える
先頃、亡くなった弁護士でフリージャーナリストの日隅一雄氏の最後の著作物は56頁足らずの小冊子・岩波ブックレットである。この小冊子に書かれていることは民主主義ならば「当たり前の事」である。『なぜ国民はこれほどまでに ないがしろにされたのか 「主権在官」を打破し、私たちのの社会をつくるために』と遺言を国民に託し...彼は50年足らずの人生を終えた。我々が「主権者」として目覚めるには...
「はじめに...」では...終戦後の中学一年生用の教科書に使われた「あたらしい憲法のはなし」から主権とは何かを引用しているように...もう一度...無垢だった少年や少女の頃にリセットして...国民が「主権者として振る舞うために」...問題や障害となる項目を...明らかにしている。
内容
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1- 情報は誰のものか
政府の情報隠し/二種類の情報入手法/作成されなかった議事録/
情報公開の「対象外」という問題/情報をどう公表するか/記者会見の開放を/
東電の姿勢/「私企業」は正当な理由か?/内部告発という手段/内部告発者をどう守るか
2- 誰のための官僚か---「主権在官」の実態
官僚の仕事/経産省という組織/規制と推進の分離/「天下り」という問題/
困難な天下り防止/オンブズマン制度の導入を/国会による監視/
3- 司法の限界
なぜ司法は原発を止められなかったのか/裁判官へのプレッシャー/技術性・専門性/
判検交流/政治的自由の欠如/裁判官への制約/裁判官へも市民的自由を/
市民の役目/
4- 主権者として振る舞うために
主権者と民主主義/五つの条件/制約された選挙/党議拘束という問題/省令・通達/
審議会をどうするか/政治への直接関与を/国民投票制度を/デモという手段/
国家権力による過剰な管理/政治的リテラシーの重要性/メディアリテラシー教育/
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主権者として振る舞うためにPosted by S.Igarashi at June 30, 2012 09:55 AM
最後に、主権者として振る舞うために、「あたらしい憲法のはなし」から示唆に富む文章を引用したい。この小冊子は戦後間もない時期の中学生に、こう呼び掛けていた。
「いまのうちに、よく勉強して、国を治めることや、憲法のことなどを、よく知っておいて下さい。もうすぐみなさんも、おにいさんやおねえさんといっしょに、国のことを、じぶんできめてゆくことができるのです。みなさんの考えとはたらきで国が治まってゆくのです。みんながなかよく、じぶんで、じぶんの国のことをやってゆくくらい、たのしいことはありません。これが民主主義というものです。」
しかし、戦後、私たちは主権者として振る舞うことをわすれ、あまりに多くのことを国会議員、そして官僚に任せすぎた。そして、気付いた時には「国のことを、じぶんできめてゆくこと」も「じぶんで、じぶんの国のことをやってゆく」こともできなくなってしまっている。
「いまのうちに、よく勉強して」という意味を、もう一度考え直さなければならない。
私たちが主権者として振る舞うために、「思慮深さ」を身につけたうえ、積極的に政治に参加していかなければ、この国は変わらず、また取り返しのつかない「何か」が必ず起こるだろう。