May 30, 2008

そうだ 京島、行こう!『時差ボケ東京』

LOVEGARDEN01.jpg

と云うことで週に一度だけ都内に行く出講日を利用して、山里から川向こうは京島まで足を延ばした。東武浅草から電車に乗るのは何年ぶりだろう。記憶に残っている最後はターミナルビルの浅草松屋の食堂で「お子様ランチ」を食べた時、未だ小学校には上がってないからたぶん昭和30年くらい、遥か昔の話だ。下りる駅は東武浅草から二つ目の曳舟、隅田川を渡るとき微かに潮の匂いがした。曳舟で下りたのは初めて、足立に住んでいた頃、東武電車に乗ることがあっても東武浅草から梅島まで途中下車したことは一度もなかった。LOVEGARDENまでの道順はGoogleMapで調べておいた、途中でクリーニング店と主人の姿を横目で見て、暫く行くとカーブの向こうに店の前で働いているcenさんの姿が見えた。

ブログで公開された『時差ボケ東京』表紙を見て、海馬を刺激されたのか、何故かエリオットによる「荒地」の次の一節(福田陸太郎・訳)が脳内にイメージとして浮かび上がった。

まぼろしの都市、
冬の夜明け、茶色の霧をくぐって
大ぜいの群衆がロンドン橋の上を流れていった。
死はあんなに大ぜいの人々を滅ぼしたのか。
思い出したように短いため息をもらしながら、
みんな自分の足もとを見つめていた。
背中を丸めうつむきかげんに重そうな足取りで歩く人々、彼らにだけフォーカスが合わされ、人間だけが鮮明に写り、他の背景や前景はブレてボケている。脇道の奥から狙撃兵のようにカメラを構え流し撮りしているmasaさんの姿が目に浮かぶ。

そうした個が埋没してる群衆の写真と対照的なのが、街中を疾走する自転車、流れる背景に個が際立って美しい。う〜ん、これは広告代理店のアートデレクターの目に留まるとパクられて何かに使われそうだ。masaさんが自費出版を選択したことが理解できる。暗闇に溶ける時差ボケサビオウの写真もある。そして銀座鳩居堂の前をアビー・ロードに変えたカメラ目線の女の子に僕は秒殺されてしまったのである。
参ったなぁ...。

Posted by S.Igarashi at May 30, 2008 10:21 AM
コメント

川好きonnaさん、御無沙汰してます。

そうか、masaさんの写真には山口への想いも通奏低音として流れている訳ですね。それが都市の骨格としての地形への興味にどこかで繋がるのかも...

PS「川の地図辞典」の出ていた先日の東京新聞の企画広告をブログエントリーに取上げてみました。東京新聞朝刊のTokyo発で「川の地図辞典」が取上げられると良いですね。

Posted by: iGa at June 21, 2008 10:22 AM

masaさんの写真とiGaさんのコメント、いいですねぇ。「川の地図辞典出版記念ウオーク」の懇親会で脇田先生が「人生、すてたものでないなぁ(まんざらでもないなぁ)」とおっしゃっていた声がよみがえります。うちも大変お世話になりありがとうございました。
T.Sエリオットの詩! そう、ひさびさに思い出しました。masaさんと出版記念ウオークで歩きながら、ご両親の故郷のお墓のある土地の話などお聞きしました。その時、心優しいmasaさんの言葉に、伊東静雄の詩を思い浮かべました。
故郷の人たちが、一対の墓として眠っていることに慰められて 反歌として
「故郷を捨てた私が 都会よ どうしてお前にあえて安んじよう/ 詩作を覚えた私が 行為よ どうしてお前に憬れないことがあろう」 なんですが…。詩作と行為を2元対立に扱っているとこなんて、「日本浪漫派」に分けられる詩人だな。masaさんは「写真を覚えた私が 都会よ どうしてお前を愛さないわけがあろう」となる感じです。「時差ボケ東京」を毎日めくっていると、やわらかく自分の視点が変えられていくような気がします。

刊行と書店での取り扱い、おめでとうございます!

Posted by: 川好きonna at June 21, 2008 07:33 AM

あ、さっすがiGaさん。実は、撮影者である僕は、いまのいままで、その事実に気づいていませんでした(^^; ヤバ(^^;

Posted by: masa at May 31, 2008 02:16 AM

masaさん、どうもです。
やっぱり、アビーロードと呼んでましたか。(^_^)
あの四人組、一見歩調が合っているようで、てんでばらばらなのが良いですね。それと男の子はお揃いのスニーカー、女の子がお揃いのパンプスを履いていて、なんか足もとが絵になってますね。

Posted by: iGa at May 31, 2008 01:48 AM

iGaさん、こんばんわ。出講日とは仰るものの、はるばる京島まで出向いてお求めいただきまして、本当にありがとうございます。これもJEDIの宿命(^^;とあきらめてくださいませ!
実は、デザイナーの安田さんは、相当なビートルズマニアでして、あの写真は、編集段階からアビーロードと呼んでいたんですよ。なんせ、ノンブルがありませんので、それぞれの写真に、呼び名が必要だった…ということもありますが…。
ところで、エリオットの詩、惹かれます。早速入手し、じっくり味わってみたいと思います。
ほんとに…今回もまた、お付き合いいただき、重ねてありがとうございます。

Posted by: masa at May 30, 2008 10:41 PM

>アビー・ロード金髪美女に秒殺されていたなんて
masaさんを追体験しただけ...です。(^_^;)

Posted by: iGa at May 30, 2008 07:03 PM

こんにちは!先日は遠い所までお越し頂きありがとうございました。しかも手土産に加え、為になるお話も沢山聞かせて頂き、本当に多謝です。
しかし、知らなかったなぁ〜。
iGaさんが、アビー・ロード金髪美女に秒殺されていたなんて(^^;;

Posted by: yukiりん at May 30, 2008 02:18 PM