August 09, 2007

ドーキンスとMac

そういえばドーキンスは彼の代表作・利己的な遺伝子(1989改訂版・紀伊国屋書店1991年)の本文98頁『たぶん、意識が生じるのは、脳による世界のシミュレーションが完全になって、それ自体のモデルを含めねばならぬほどになったときであろう。』の補注に於いてマッキントッシュをモデルに取り上げて解説を加えていたことを思い出した。

本書執筆の時点(1989改訂版)で、ユーザー友好性に関する市場のリーダーほ、衆目の一致するところ、アップル・マッキントッシュである。その成功ほ、この本物のハードウエアー機械 ― そのメカニズムは、ほかのあらゆるコンピューターと同じく、おそろしいほど複雑で、人間の直感とはきわめて相いれがたいものである ― を、別種の機械、すなわち人間の脳と人間の手にぴったり合うように特別に設計された仮想機械のごとく見せる一連の内蔵プログラムのおかげである。マッキントッシュ・ユーザー・インターフェースと呼ばれる仮想機械はまぎれもない機械である。それほ押すべきボタンをもち、ハイファイ・セットのようなスライド・コントロールをもっている。しかしそれは仮想機械である。ボタンとスライダーは金属やプラスチックでほできていない。それらは、画面上の図であり、あなたほ画面上を仮想的な指を動かして押したりスライドさせたりするのである。一人の人間として、あなたはコントロールの主体であると感じる。なぜなら、あなたは物事を自分の指で動かすことに慣れているからである。私ほ二五年間にわたって、さまざまな種類のデジタル・コンピューターの熱心なプログラマーであり、ユーザーであったが、マッキントッシュ (あるいはその模倣機種)を使うことほ、以前のいかなるタイプのコンピューターを使うのとも質的に異なる体験であると証言することができる。それに対する無理のない自然な感情がある。ほとんど、この仮想機械が自分自身の体の延長であるかのような感覚である。仮想機械は、おどろくべき程度まで、あなたにマニュアルを眺めるかわりに直感を使うことを許してくれる。
利己的な遺伝子(1989改訂版)紀伊国屋書店1991年発行より。 Posted by S.Igarashi at August 9, 2007 10:04 AM
コメント

どうもです。
いま書店にならんでいるのは昨年発行した増補新装版ですね。
松岡正剛の千夜千冊『利己的な遺伝子』
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1069.html

Posted by: iGa at August 9, 2007 02:30 PM

これは非常に優れた、ユーザインタフェース、ユーザエクスペリメンスについての記述と思います。
iPhone に至るまでの「直感的.......」なる事の全てが説明......、といっても本書を読んでいませんので......読まなくちゃ。

Posted by: AKi at August 9, 2007 01:40 PM