1980年代に一級建築士試験・設計製図受験講座の講習会講師を5年程務めたことがあった。受験講座は4月から10月の試験日直前まで毎日曜日行われ、前半を基礎練習に8月の学科試験の週に設計製図の課題が発表された後は、その課題に合わせて練習課題が出される。試験課題が集合住宅の年があった。練習問題では規模や敷地条件を想定してプランニングを行うのであるが、ある受講生は毎回、建築基準法とその関連法規を無視してプランニングをし、何度注意してもそれが直らなかった。彼は建築の質のことなど全く考えていなかった。日照や採光を無視し面積さえ確保できれば良いと云う考えであった。僕は憲法25条の生存権を引き合いに出し、建築基準法の主旨を「国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守るための最低限の基準であることを示し、この集合住宅の計画案で健康で文化的な最低限度の生活が過ごせるかよく考えなさいと諭したが、僕の言っていることが理解できないのか一向にプランが改善されることもなく、当然の結果として彼は試験に失敗した。試験直前の特訓講座で、彼が日本を代表するゼネコン大手五社の一つに勤める者であることが胸のバッチで判明したが、あのゼネコンならば、さもありなん、結局はそういう社員教育が為されているのであろうと妙に感心してしまった。近頃、サスティナブルやロハスという言葉をそうしたゼネコンやデベロッパーのサイトで見せられるにつけ片腹痛い思いをするのである。
憲法25条
1、 すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2、 国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
憲法の理念はどこへやら、経済効率を第一優先とするような都市計画法や建築基準法の改正をみるにつけ何をか言わんや。社会性や公共性という言葉ですら死語となりつつある。
Posted by S.Igarashi at November 12, 2005 10:10 AM古山せんせい、どーもです。
はい、原発事故は起こるべくして起き...国民の生存権が脅かされていると云うのに、だれも咎められないし...再稼働かよ...。看板に偽り有りの政党は...国民から基本的人権を奪う憲法改正案を作ってるし...何がなんだか...
Posted by: iGa at May 3, 2012 10:31 PM学会誌の伝統木造部会がブチ切れていたのが面白かったです。
一流企業は満州国で何をなさっていたか覗いてみると、これも面白いです。
昔、建築家・吉阪隆正が新建築に「かんそうなめくじ」というタイトルのエッセーを寄稿したことがあった。内容は殆ど忘れましたが、憶えているのは建築が金儲けの道具に成り下がってしまったと嘆いていたことです。現在の状況はそれよりも悪くなっているでしょうね。
Posted by: iGa at November 14, 2005 09:52 AM建築基準法の規定が、ドンドンと、こと細かくなり、
なんで、ここまで?と思ってしまう。
反面、そうしないと、粗悪な建物が増えてしまうからなのか?と思ってしまう。
木造住宅の金物の事。
採光規定…。
常時換気の事、etc.....。
否定はしないけれど、
しかし、そこまで、あんたに言われたく無いよ…。
と思いつつ、逆に、そんなに質の低下が著しいのかな?と思ったり…。