August 26, 2005

Rotonda

GoogleMapでイタリア紀行を楽しんでいたらヴィチェンツァにも詳細な衛星写真があった。ヴィチェンツァは建築家・アンドレア・パッラーディオの活躍した都市としてバシリカ等の建築共々、世界遺産に登録されている。またテアトロ・オリンピコには天正少年使節団来訪を記念するレリーフが残されており、日本とも少なからず縁のある都市である。

パッラーディオの代表作といえばロトンダ(ヴィラ・アルメリコ・カプラ)であるが、それを衛星写真で見ることによってロトンダが如何に「純粋建築」であるかがよく解る。(写真は北東方向から見たもの、左手にトウモロコシ畑が広がる。1989年8月30日午前10時前に撮影)

RotondaCG1.jpg

上図はVectorWorksによる3Dモデルで北西側を見たものである。デザインモチーフにはプリミティブな幾何学図形の丸、十字形、三角、四角(○×△□)が用いられ、ロトンダと云う通称の起源である円形広間が建物の中心となる。ロトンダ上部のクーポラも建築四書に残されている図面では外観も半球であり、実施されたクーポラの外観の形状とは異なっている。正方形平面の各面にはペディメントを戴いた5ベイの列柱のあるポルティコが設けられている。そして写真だけでは解らないのが建物の配置である。このロトンダの衛星写真を見れば一目瞭然であるが建物は子午線に対して45°の傾きを持っているのである。つまりこれによって全ての壁面に対して太陽の日射が得られ、「純粋建築」としての面目を保つのである。

アプローチ右手のバルケッサ(納屋・附属棟)はパッラーディオの死後にヴィチェンツォ・スカモッティの手によって作られたと云われている。(1989年8月30日午前10時過ぎに撮影)入場料:5000リラ(1989年当時)
ゲーテの「君知るやかの家を、いらかは円柱に支えられ、広間や部屋々にはともしび輝き、大理石の像は我を見つめる。」と云う詩は未だ見ぬロトンダをイメージしたものと云われている。しかし、そのゲーテもイタリア紀行でロトンダを訪れた際、その居住性に疑念を抱いている。これも「純粋建築」故の評価であろう。それは他の「純粋建築」であるミースのファンスワース邸や丹下健三の成城の自邸にも云えそうである。
「純粋建築」としての評価を別にして、住宅としてのロトンダの歴史は悲劇そのものであったようだ。施主のパオロ・アルメリコの死後、ロトンダを相続した庶子ヴィルジニオ・バルトロメオは二束三文でオドリコ・カプラに売却、そのオドリコ・カプラからロトンダを相続した孫はならず者でロトンダはマフィアかヤクザのアジトと化し、ロトンダは荒れ放題、幽霊屋敷の相を示していたとも云われている。その後、ならず者カプラの血統は絶え、紆余曲折して20世紀になってからヴァルマラーナ家の所有になっている。

RotondaCG2.jpg

Rotondaphoto01.jpg

Posted by S.Igarashi at August 26, 2005 01:09 PM
コメント

著者はずいぶんと守備範囲が広いですね。

Posted by: iGa at August 28, 2005 12:40 PM

この「完璧な家」なる本の著者のヴィトルト・リプチンスキって、
aki's STOCKTAKING に取り上げた「ねじとねじ回し」の著者でもありました。

http://landship.sub.jp/stocktaking/archives/000190.html

Posted by: AKi at August 27, 2005 06:18 PM

僕も「完璧な家」を購入しましたが同じく未だ読了してません。
因みにパッラーディオを見に行く前にJIAでレクチャーを受けましたが、その時の講師が「完璧な家」を翻訳された渡辺真弓さんでした。

Posted by: iGa at August 27, 2005 02:17 PM

五十嵐さんのイタリア建築、パラーディオへの造詣の深さを示すエントリーに感銘いたしております。
「完璧な家」なるパラーディオの評伝本を買い込みましたが、未だ読了せずというところです。

Posted by: AKi at August 26, 2005 08:29 PM