July 30, 2005

目高・平行・あおり付き

その昔、工学院大学の学生だった友達から、建築家・磯崎新の特講があるから聴きに来ないかと誘われたことがあった。そのとき磯崎氏は福岡相互銀行本店のスライドを見せながら、建築写真のセオリーである「目高・平行・あおり付き写真」について異を唱えた。こうした建築雑誌向けの写真は実際の見えかたと異なり不自然であるというのがその理由であったと思う。その後、磯崎氏は写真家・篠山紀信と手を組み六耀社から建築行脚シリーズを出すことになる。写真家・篠山紀信による建築写真への挑戦であった。それは写真家・二川幸夫の主宰するA.D.A EDITA Tokyoが発行する建築雑誌GAシリーズの「目高・平行・あおり付き写真」に馴れた目には新鮮に写った。

こんなことを思いだしたのはakiさんのaki's STOCKTAKING・吉祥寺通りにてと、masa さんのKai-Wai 散策・吉祥寺通りにては同じ建築を被写体にしても写真表現に違いがあって興味深かったからである。akiさんの分析的な写真と、masa さんの対象にがぶり寄って行く写真、どちらも見事である。そんな二人が根津・谷中界隈で邂逅したというから、どんな写真を見せてくれるのか楽しみである。

と云うことで、透視図法で解説。
目高:目の高さ、つまりアイレベルで撮影
平行:壁面に平行に撮影する。
あおり付き:垂直方向に消失点が生じないようにする。垂直線はすべて平行。
Photoshopであおり補正を試みた写真の例
一点透視投影図(クリックで拡大)
こうした一点透視投影図のような構図が「目高・平行・あおり付き写真」と云える。新建築やGAシリーズの写真の75%くらいは「目高・平行・あおり付き写真」ではないだろうか。建築空間のプロポーションや構造を説明するのに適しているだけでなく、誌面を編集デザインするのにも都合が良い。


二点透視投影図(クリックで拡大)
図法的には建物を画面に対して30°、60°に配置するのが三角定規を用いて簡単に描くことができるが、あまり見栄えの良い透視図は得られない。そこで、15°、75°とかに配置すると消失点が製図板の中に収まらなくなるので、透視図を描くには幅が1800ミリとかの製図板が必要になる。そして垂直線方向に消失点を持つと三点透視投影図(鳥瞰図等に応用)になる。
現在は手描きの透視図も構図を決めたり下絵の段階では3DCGで行うのが一般的です。

Posted by S.Igarashi at July 30, 2005 10:57 AM | トラックバック
コメント

iGaさん、やはり僕もトリミングは滅多にしません。目高・平行は無視し、できるだけ高くなる位置を探し、カメラを垂直にって感じですね。神田須田町の看板建築の写真のみ、前回の方法で撮り、トリミングしています。

Posted by: masa at August 2, 2005 03:37 PM

masa さん、こんにちは。
勝手なことばかり書いて、こちらこそ恐縮してます。
私もカメラをなるべく垂直に構えるようにしてますが、トリミングしないでいるから地面ばかり写してると言われたりします。
と言いつつ、Uzumeさんにがぶり寄った写真、はにかんだ表情に脱帽!
「大判写真機とKai-Wai」ん〜、これは楽しみですね。

Posted by: iGa at August 2, 2005 09:55 AM

iGaさん、こんにちわ。秋葉ホコ天で血迷っているうちに、AKiさんのお撮りになった写真と並べられれは、縮みあがってしまいます。
それはともかく、僕は町の長屋などを多くスナップするように撮っていますが、実は、パースペクティブがとても気になる質です(いのうえsanも、同じ質でいらっしゃると思います)。
したがいまして、現在のところ、遠近の歪みを少しでも是正して撮りたいときは、撮影後のトリミングを計算して、最初からカメラを建物と並行に構えています(通常よりずっと下向き)。
アナログ写真でも、暗室レベルでパースペクティブを修正する方法がありますから、デジタル写真の場合、フォトショップなどでそれを修正しても、罪悪感(^^;を感じる必要などない、とも思うのですが、いずれは、下町の朽ちた長屋のある風景を、アオリの効くカメラ(ウッドのディアドルフ)で撮りたい、と密かに思っています。

Posted by: masa at August 1, 2005 05:50 PM

どうも、いのうえさん こんにちは。
分析ついでに透視図法による解説を加えました。

Posted by: iGa at July 31, 2005 03:24 PM

iGaさん こんにちは。masaさんの「がぶり寄り」をご一緒した目白散策で実感しました。一方で、建築家の皆さんの 分析的な眼、昨年の「ブログの力」の一次会から二次会へ移動する坂道の途中、大きな古い門の在るお屋敷のところで発揮されてましたね。あの門 既に撤去され、お屋敷が現在取り壊し中なのです。
http://www.jsc-com.net/shimoochiai/top.htm

Posted by: いのうえ at July 31, 2005 01:06 PM

面白そうな企画ですね。

Posted by: iGa at July 30, 2005 02:50 PM

iGa さん、どうもです。
なかなか面白かったですよ。暑かったけど。
masa さんと比較されると困ります。腕の違いは当然ですが、Cyber-shot U じゃ太刀打ちできません。
又、「masa さんと Kai-Wai」ってのをやっていただきましょう。こりゃなかなかの人気の企画になりますね。

Posted by: AKi at July 30, 2005 11:54 AM