チャーリー・ヘイデンのリベレィション・ミュージック・オーケストラは1969年スイングジャーナル主催 第3回 ジャズ・ディスク大賞金賞を受賞しているアルバムだ。1967年から発足したジャズ・ディスク大賞は第1回金賞「ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンVol.1」、第2回金賞「クロイドン・コンサート/オーネット・コールマン」、そしてこの「リベレィション・ミュージック・オーケストラ」と続き3回連続してフリージャズが金賞を受賞している。その意味でも「リベレィション・ミュージック・オーケストラ」は1960年代を総括する時代の精神が色濃く反映したアルバムとなっている。そして僕がジャズを聴き始めたのもこの時代である。
「リベレィション・ミュージック・オーケストラ」に参加した多くのミュージシャンはフリージャズのムーブメントであった1964年の「ジャズの10月革命」を経て結成されたJCOA(ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ・アソシエーション)のメンバーが核となっている。
アルバム制作についてチャーリー・ヘイデンはフランコ独裁政権に対抗するスペイン市民戦争の歌に触発され、1967年のチェ・ゲバラの死、1968年の民主党大会でのヴェトナム戦争反対討議の否決、等が動機付けとなったとライナーノーツで述べている。
チャーリー・ヘイデンのベースソロで始まり、カルロス・ブエブラの唄がコラージュされた後で、ドン・チェリー、デューイ・レッドマンのソロと続く"Song For Che"はチェ・ゲバラに捧げられた曲である。
アルバム全体に、マーチやフラメンコ・ギター、そしてノスタルジックなスパニッシュメロディ等がコラージュされ、哀愁が伴う。何故かスパニッシュメロディの持つ漂泊感、喪失感は南北アメリカ大陸でより増幅される気がしてならない。
このアルバムの翌年1970年には「ビッチェズ・ブリュー/マイルス・デイビス」が金賞を取り、変革の時代を迎えることになる。そして政治性のあるテーマがジャズのアルバムに反映されることも少なくなってくる。ユリイカの1976年1月号のジャズは燃えつきたかはベトナム終戦翌年に刊行されている。これもまた時代の喪失感がタイトルに反映されているのであろう、ジャズの替わりに違う言葉を当て嵌めても良かろう。
蛇足であるがキース・ジャレットのインパルス時代のカルテットのメンバーであった、デューイ・レッドマン、チャーリー・ヘイデン、ポール・モチアン、の三人全てがこのアルバムに参加している。現在のキース・ジャレット・トリオのベーシスト、ゲーリー・ピーコックもそのルーツはフリージャズの人である。
私にとって、とても刺激的なアルバムに出会う事が出来ました。
ありがとうございました。