一冊でわかる ポストコロニアリズム
ロバート・J・C・ヤング著、本橋哲也・訳、岩波書店
東西冷戦時代の幕引きの後にあらわにされた南北問題、つまり植民地以降の世界を見つめ直すテキストである。著者は中近東、カリブ、インド、アルジェリア、ブラジル、アフリカ等、様々な情景をモンタージュ的に提示し読者に世界の現実を問いただし、植民地の独立後も植民問題が終わっていないことを明らかにしている。その一つでもある旧宗主国間によって分割された国境問題は未だに紛争の火種として燻っている。西欧社会の国民国家という虚構を旧植民地に押し付け独立させた後も利権を保持し搾取し続けるという構図は植民地時代と差違はない。
ポストコロニアリズムはリアルタイムで動いている世界史つまり現実世界を連続した時間軸と空間の中で捉えようとする考え方ではないだろうか。ポストコロニアリズム的な見かたはサッカーワールドカップや英国を中心としたロック・ミュージックやレゲエ、大英帝国博物館、ベルリン博物館、ルーブル美術館、等々を批評する道具にもなりえるだろう。もちろん、イラク戦争やパレスチナ問題のルーツが大英帝国によるアラブ社会の支配にあったことは言うまでもない。
ポストコロニアリズム 岩波新書
本橋哲也・著、岩波書店
翻訳者による著書もある。
アメリカ独立戦争もポストコロニアリズムという視点で見ると歪んで見えます。植民者が宗主国に上納金を支払うの嫌で戦争を仕掛けたというのは、どこかヤクザの内部抗争に通じるものがあるような気もします。先住民や奴隷から見れば搾取する者の親分が入れ替わっただけです。
J.F.Kのニューフロンティア精神もポストコロニアリズムという視点で見ると、身勝手な論理です。中学生の時にJ.F.Kを偉いと思っていた僕はほんとにバカでした。