先日、出版のユニバーサルデザインフォーラムに行き、そこで初めて知った言葉がこの「墨字本」でした。出版社の人の口から発せられた、その言葉は話の文脈から意味が理解できましたが、一般の健常者には馴染みのない言葉でした。点字本等、視覚障害者向けに作られた本に対して、一般向けにインクで印刷された本を「墨字本」と言うようです。
フォーラムそのものは「ユニバーサルデザイン」より、視覚障害者の情報アクセスのバリアフリーに対する議論に終始していましたが、先ずはバリアを取り除かねば「ユニバーサルデザイン」もあり得ないと云うことでしょう。情報アクセスへのバリアフリーは視覚障害者だけの問題ではなく民主主義の基本ですが、メディア規制法を是が非でも成立させようと政府与党が何を考えているのか、そこが問題です。ちょっと、残念だったのは発表者のPowerPointによるプレゼンテーションに、フォントサイズやフォントカラーに対する配慮が欠け、視認性が著しく劣っているものが見受けられたことでした。
Posted by S.Igarashi at March 6, 2005 04:10 PM佐野眞一氏も「墨字本」という呼称を初めて知ったと言ってましたね。相互理解がテーマなのに、どういう訳か業界人は、ああいう場所でも業界方言を説明なしに平気で使いますね。
人のフリ見て我がフリ直せ。(^_^;)
阿部さんに専門用語の駄目だしされたのを思い出した(冷汗。
「墨字」は点訳の用語なんです。
「点字」に対して、健常者が使う文字で表記されたもの全てを「墨字」と分類します。もちろん手書き文字も。
墨字を点字に訳す場合は「点訳」、点字を墨字に訳す場合は「墨字訳」といいます。そのままですが(^^;。
そして、大きな活字の本(大活字本)は当然墨字に分類されます。
...が、ここに大きな問題がいくつかあるのです。
・現存の大活字本は、読みやすさなどに対する配慮がなされていないのではないかと思われる「ただ字が大きいだけ」のものがほとんどであること。
・提供する側が、○○ptの「ゴシック体」「明朝体」などと大雑把な情報しか出していないこと。(これはJIS規格にもいえることですが、せめて文字の太さの分類くらいはしないと...)
・通常見出しに使うような文字サイズで本文を組むこともあるので、これに適した書体を設計する必要があること。
これらは、まっとうなタイポグラファーが制作に関わらなければ解決して行かないと思っています。...と気付いたのが、かれこれ4、5年前...
著作権や流通の問題は専門の方々におまかせして、そろそろ自分は自分の畑に種を撒く時期が来たと思っています。
テキストデータを点字データにするのも、「分かち書き」や助詞の「は」を「わ」、「へ」を「え」と表記しなければならない決まりなどが多数あり、一筋縄ではいかないのですが...
まずは、墨字本をきっちり作って行かねば。
フォーラムの少し前に偶然にも、日本ALS協会の機関誌をデザインされている方とネットで知り合い、その機関誌がA4判の紙の冊子とPDF版でリリースされていることを知りました。
PDF版はALS患者の方々に配慮して、PCの1画面に1ページが表示されるように、ページを再設計されています。テキストデータがあってのこと。松岡さんが講演の中でこのことに触れてくださると良かったんですが...(^^;;;。
http://www.jade.dti.ne.jp/~jalsa/
講演者のPowerPoint、当日はじめて見ました...つらい(--;。
エントリーより長いコメントになってしまいました(大汗。
Posted by: T.Takahashi at March 7, 2005 01:35 PM