昨年暮れからのNHK人間講座「だます心 だまされる心」は初回しか見ていないが、講師を務めている安斎育郎氏の人はなぜ騙されるのかは以前読んだ事がある。既に文庫本も出ているようだ。「人はなぜ騙されるのか」は雑誌や新聞(主に関西版)に発表されたコラムを纏めたもので、内容は「不思議現象を考える」、「科学する目・科学するこころ」、「人はなぜ騙されるか」、「社会と、どう付き合うか」、「宗教と科学」の五章で構成され、見開ページに一つの話題と読みやすく編集されている。初版が発行された1996年の前書きの冒頭で、米国南部地域の「進化の学説は聖書の天地創造説を冒涜する理論だ」という前時代的認識を元に「進化論を科学的に裏付けられた事実として教えることを禁止する法律案」が集中審議されたことを上げ、事実を宗教的教義を基準に切り捨てるこうした反理性的な傾向が、政治的な反進歩・保守の思想と結合していることに、一種の不気味さを感じているのは私だけでしょうか。と筆者は述べている。筆者の憂いは、ネオコンやキリスト教原理主義者に支えられたブッシュ政権二期目にして現実化の様相を示しそうである。