January 03, 2005

BYE BYE BLACKBIRD

ByeBye Blackbird.jpg

マイルスの死の二週間後に録音されたキースジャレット・トリオの"BYE BYE BLACKBIRD"はマイルスに捧げられたトリビュート・アルバムだ。キース・ジャレット、ゲーリー・ピーコック、ジャック・ディジョネット、三人ともマイルスと共演した経歴を持つプレイヤーだ。
マイルスの"Bye Bye Blackbird"で僕が好きなのはアルバム"'Round About Midnight"に収録された演奏だ。あのミュートの掛かったトランペットの硝子細工の壊れそうなスリルに満ちた音はマイルスにしか演奏できないものだ。

キース・ジャレットが在籍した1970年のマイルス・バンドはファンクバンドの様相を示していた。

ある晩、マイルスはキースにたずねた。なぜ、俺がバラードをやらないか、わかるか?それはバラードを心から愛しているからだ。そう彼は答えた。(マイルス・ディヴィスの生涯より、引用)
ライナーノーツによれば"BYE BYE BLACKBIRD"の録音から10ヶ月後、ニューヨークタイムズに寄稿されたキース・ジャレットの手記にはこう書かれている。(スウィングジャーナル誌1992・12の翻訳文から引用)
マイルスのサウンドは沈黙から生まれる。人類で最初にミュージシャンになろうとした人間が、最初の一音をプレイしようとした時、彼の前に存在していた、広大で流動的な縁のない沈黙。私たちはこの沈黙を必要としている。何故なら、これこそ、音楽のありかだからだ。
意味するところは、まるで武満徹の「音、沈黙と測りあえるほどに」と同じである。
マイルスの演奏スタイルは時に寡黙に聴こえる。他のプレイヤーが10の音を使うときでさえ、マイルスは7の音で済ませオーディエンスの想像力へ委ねる。
キース・ジャレットとマイルス・ディヴィスは演奏のスタイルは違うが、お互いに理解し、ある絆で結ばれていたのだろう。
キース・ジャレットの自由奔放なプレイにマイルスは「どうやって何もないところから、何の枠組みもなく、演奏できるんだ?」と感心するのだった。(マイルス・ディヴィスの生涯より、引用)
マイルス・ディヴィスの囁きが聴こえてきそうなアルバムである。

Posted by S.Igarashi at January 3, 2005 12:23 PM
コメント

実は、ちょっとiPodのCF風な画像を作ってみようという動機付けから、こんなエントリーが生まれました。

Posted by: S.Igarashi at January 5, 2005 11:27 AM

書き留めておきたい言葉の詰まったエントリーですね。
呪文のようにつぶやきながらピアノにむかうキースにはなんだか伝道師のような雰囲気がありますが、
>広大で流動的な縁のない沈黙。私たちはこの沈黙を必要としている。
という、マイルスについて語った言葉にはうならせました。

Posted by: fuRu at January 5, 2005 10:25 AM