October 22, 2004

真夜中のイサム・ノグチ

先週の土曜日深夜にテレビ朝日で「イサム・ノグチ」のドキュメンタリー番組が放送された。ナビゲータは「イサム・ノグチ-宿命の越境者」の著者であるドウス昌代。イサム・ノグチの誕生にまつわる逸話から、生い立ち、成長、人間関係、芸術家としての自立と成功、苦悩等を追っている。生誕100周年を記念する番組として内容的には優れているのだが、問題はその放送の時間帯と間に流されるTVCFにあった。放送に魅入り高揚した精神は、途中に入るテレビ朝日のお笑い系番組宣伝で、ズタズタにされ、水を浴びせられすべてが打ち消される。TVCFの枠が売れないから自局の番組宣伝をしているのだろうが、明らかにこの時間まで起きて「イサム・ノグチ」を見ようとする人間とは相容れない内容である。テレビ朝日もテレビ東京も、始まりは教育放送を主体にする放送局として郵政省の認可を得て免許を取得したテレビ局であった筈である。初心は何処に、教育番組うんぬんは差し置いても、せめて優れたドキュメンタリー番組の枠だけは残して欲しいものである。アリバイ作りの御為ごかしの放送なら、いっそのこと無いほうが良い。
「イサム・ノグチ - 宿命の越境者」
ドウス昌代著 講談社文庫(上・下)
定価790円(税込)
「石は地球の骨だ」その言葉は常に自らの帰属する場を求め、漂泊する魂が辿り着いた答えなのか。原作を読みたい気持ちにさせられた。
イサム・ノグチ庭園美術館

Posted by S.Igarashi at October 22, 2004 01:11 AM
コメント

イサム・ノグチの作品「桃太郎」や「ブラックスライドマントラ」は 見るだけでなく、中に入って遊んだりできるのがよいですね。特に 渦巻きぐるぐるの「ブラックスライドマントラ」は「サザエ堂」を 連想してしまいました。
http://landship.sub.jp/stocktaking/archives/000363.html

Posted by: いのうえ at November 6, 2004 11:01 AM

これは、デジタルデバイドの亜種BSデバイドと云うことですかね。
http://www.bs-asahi.co.jp/bsasp/main.html

Posted by: S.Igarashi at October 28, 2004 05:07 PM

直ぐにAmazonに「イサム・ノグチ - 宿命の越境者」を注文、全体を俯瞰してから読み始めているところですが、イサム・ノグチを語ること、即、20世紀の歴史そのものですね。作者・ドウス昌代の丹念な関係者への取材と調査によって執筆された本書がなければ、実現しなかった番組と云うことが良く分かります。番組を見て思い浮かんだ疑問も本書で少しずつ氷解して行くようです。

Posted by: S.Igarashi at October 28, 2004 02:31 PM

おひさしぶりです。メゾンエルメス 8階フォーラムにて10月17日までやっていた「イサム・ノグチ/ランドスケープへの旅」を見に行ったのですが、この放送はとても残念なことに見逃してしまいました。放送のあいまに流れたというCMと同じ類のものに、会場にて出くわしましたよ。なんちゃってセレブの方々が会場でとめどないおしゃべりを大声でしてるんです。入場無料はこの時ばかりは良くないなと思いました。

Posted by: いのうえ at October 23, 2004 11:01 AM

放送当日、コマーシャルに中断されることに絶えきれず、見るのを止めてしまいましたが、昨日、日本シリーズの時間帯に録画しておいたビデオをコマーシャルを飛ばしながら見ました。以前にBS朝日が放送したものを地上波で放送したもののようです。
放送を見て「イサム・ノグチ」について殆ど何も知らなかったに等しいことに気付かされました。語り部のドウス昌代も異郷で暮らす者として、常にアイデンティティに向き合わざるを得ない立場に置かれた「イサム・ノグチ」に自己同一化しつつ、客観的な視点を逸脱することもなく描かれています。ドウス昌代の日本語が、ジャズピアニスト秋吉敏子の日本語と同じように聴こえたのは、異郷で暮らす日本人特有なものでしょうか。
ルイス・カーンとイサム・ノグチのコラボレーションがルイス・カーンの急死で実現することがなかったのが悔やまれます。二人とも越境者である意味では共通性があったような気がします。

Posted by: S.Igarashi at October 23, 2004 09:44 AM