先日、とんぼ返りで宇都宮美術館まで出掛けたが、昔々県庁の仕事で何度か宇都宮には行った事が有るので、宇都宮市内はどんな風に変わっているのかGoogle検索してみた。そこで栃木県庁のホームページにアクセスしてみて驚いた。県庁舎の建て替え工事が行われているではないか。それも配置計画を見ると県庁敷地内の建物の殆どを撤去して栃木県新県庁舎を建設するというものである。県庁敷地の南西に位置する栃木県議会庁舎は1969年に建築家・大高正人氏の主宰する大高建築設計事務所 の設計、鹿島建設の施工によって建てられ、まだ竣工してから35年しか経っていない建築物である。35年と云えば木造住宅の償却年数である。それでも短いと思えるのに、公共建築の寿命がたった35年とはどういうことだろう。議会棟はメタボリズム(新陳代謝)をシンボル化した建物である。スーパーストラクチャーの構造体にプレキャストコンクリートの部材によってオフイスが増殖してゆくというアイデアが根底にあり、メタボリズム(新陳代謝)可能な建築として設計されている。35年経った現在では耐震基準等の状況の変化は認められるが、対策を施しメタボリズムする以前に引導を渡され、いとも簡単にスクラップにして良いのであろうか疑問が残る。
つまりはバブル崩壊以降、神戸大震災を契機にして新耐震基準による耐震補強や免震技術は建設業界にとっては起死回生の手段なのである。それも震災対策の拠点となる公共建築にそれらの新技術を投入するのは新庁舎建設の反対意見を封殺するにも好都合なアイテムとなる。こうしてみると穿った見方になるが北朝鮮の脅威を声高に述べ、不安を煽り国防の必要性を説き軍事力を増強する手段にも似ているような気がする。何れもそれによって利益を得るものがいることだけは事実である。
工事状況を空撮したページをみると、昨年11月1日の解体準備の状況がわかる。本庁舎の北西にある第二庁舎は僕が初めて勤めた公共建築設計事務所の仕事で、僕は設計変更と外構の一部の図面を描いている。この建物は構造が青木繁研究室によるもので、やはり議会棟に合わせプレキャストコンクリートを用いた10階建ての事務所棟である。中央コア部分は鉄筋コンクリートのスーパーラーメンになっていて塔屋部分の東西方向にはポストテンションが掛けられている。壁厚も1mから70cmくらいあり、中央コア部分の地中梁は土木的スケールを持っている。解体工事・2004/3/21の写真を見ると、解体が容易でないことが良く分かる。
原設計の透視図、工事途中で設計変更がありPC柱のデザインが変わった。修行時代、この設計変更の立面図を描いていて、その時にCADがあれば良いのにと思った。今ならPCのユニットを一つ描いて後は配列複製すれば良い。