January 15, 2004

想像して下さい

数年前のこと、私が仕事で家を空けるときに老いた母(介護認定3度)を介護保険制度を利用して、介護施設のディサービスに預けられないか、とケアマネージャーに相談した結果、近くの介護施設を紹介され、母を伴いその施設に面談に出掛けることになった。紹介したケアマネージャーは他の用事で同行できず、我々だけで面談することになった。
カウンセリングルームに通された私たちに対して、その介護施設の女性係員が最初に発した言葉は次のようなものであった。

「施設内でお母さんに何か事故があっても、当施設を法的措置に訴えないという誓約書を書いてくれないと、預かることはできません。」と言われた。
最初から免責事項の確認から説明が開始された。次にディサービスについての説明が始まった。
「送迎については施設のマイクロバスで行いますので、ご自宅にバスが到着する前に道路まで出られて送り迎えして下さい。」一方的である。
そして「お預かりする時間は、9時から10時の間に迎えに伺い、3時から4時の間にお送りいたします。」
まるで、幼稚園である。私が望んでいるのは、どちらかといえば保育園である。私が「例えば、送迎はこちらで行いますから、時間をもう少し早くしたり、或いは5時か6時くらいまで預かってもらうことは出来ないのでしょうか。?」と尋ねると、にべもなく「それはできません。」と全否定された。
それから、食事のこと、おやつのこと、着替えのこと、なんたらかんたら、と細々したことの説明。そして、「最初にお預かりする場合は、集団生活に馴染めるか分かりませんので痴呆老人グループの日に入ってもらいます。」
それから、いちおう、母を伴って施設内を一通り見学させてもらい帰宅したが、条件も合わないし、それ以上に施設の高飛車な態度にむかつくし、ケアマネージャーを通して断ることにした。

それから暫くして、新聞に「介護施設の見直し」という記事が掲載されていた。内容は問題のある施設は介護保険制度の適用から除外するというものだった。

それから、数日後、件の施設の私たちが会った担当者から電話があった。「まだ決定されてないようですが、是非、お母様と一緒に一度施設を見に来て下さい。」
その電話で私は思わず、目が点となり、ひたいからサァーっとスダレが掛かってきたが、「あの〜、先日は母も一緒でしたけれど、あなたが何か質問していた相手はいったい誰だったのですか、、」と答え、もちろん、その電話でお断りした。

テレビ番組か何かで、良い介護施設を選ぶときの条件をあげて、先ず第一に「玄関が立派すぎる施設は避けよ。」と言っていたが、その施設はまさしくその条件にぴったりであった。玄関ホールとロビーは広く閑散とし、一見して老人介護施設ということは分からない。つまりは、外部からそこで何が行われようとも誰の目にも止まらないのである。老人は社会とは隔離され、言ってみれば態のよいアパルトヘイト状態であった。

Posted by S.Igarashi at January 15, 2004 11:29 PM | トラックバック
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